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みぃ

Author:みぃ
ブログ公開:2012/4/17

この作品に出会えて
本当に良かった。
これからもずっと変わらず
愛してます。(主に副長を♡)

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鬼のなんとか


【原田 左之助/屯所】



「結局昨日からずっと降っていたんだぁ」
 ちづるは自分の部屋の障子を開けて
 そこから見える庭の水溜りを見て呟いた。
 ぽつぽつ落ちて来る雫が 水面に跳ね踊っている。
「(昨日は大雨だったし これじゃ せっかくの桜も散ってしまいそう)」
 そう思いながら 髪を男装用に高く結わえ始めた。
「この髪も格好にも もうすっかり慣れてしまったなぁ」
 独り言を言い 向かうべき所へ行く為に部屋を後にした。

「おはようございます!」
 勝手場に入ると 沖田と斎藤が既に朝餉の準備に取り掛かっていた。
「おはよう ちづるちゃん」
「おはよう」
 それぞれ ちづるに挨拶を返し また元に向いて箸やら御玉杓子を動かした。
「今日のおさんどんは 沖田さんと斎藤さんなんですか」
「そ 何故か はじめ君と一緒が多いんだよね 僕」
「何か不満でもあるのか?」
「無いわけ無いじゃない はじめ君いちいち細かいんだよ」
 口を尖らせて沖田は ちらりと斎藤を見た。
「そうやって大雑把にしているから 俺と組まされるんだ」
「ええっ これって作意的なものだったのお!?」
 これ以上放っておくとあらぬ方向にいってしまうと ちづるは慌てて間に入った。
「うっ うわぁ美味しそぉ ええっと これ持って行っていいですかぁ!?」
「ああ 頼む」
 拗ねている沖田の代わりに斎藤の返事を聞いて ちづるは御膳を運んだ。

「おはようございますっ 朝餉をお持ちしました」
「おお 雪村くん いつもすまんな!」
「おはよぉ ちづる」
「ちづるちゃんは いつも元気だねぇ」
 広間にはもう近藤や藤堂 永倉が来ていた。
 ちづるは照れながら まず最初に新選組局長の近藤の前に御膳を置いた。
 ふと ある事に気がつく。
「あの 原田さんは…… 」
 十番組組長の原田左之助の姿が見えなかった。
 土方と井上は昨日から出掛けていて不在だったのは聞いていたが
 原田は屯所内に居る筈だったので 永倉に確認してみる。
「うん? ああ 俺声掛けたんだが まだ布団にもぐってたな」
「左之さんが 寝坊なんて珍しいよな」
 永倉と藤堂が顔を見合せて言う。
「私 ちょっと見てきます」
ちづるは何か胸騒ぎを感じて 早足で原田の部屋へ急いだ。

「(まさか)」
 自分の胸の着物を鷲掴み 昨日巡察から帰った原田を思い出していた。
 部屋の前に来て一度止まり声を掛ける。
「は 原田さん? あの朝餉の用意が出来たのですが」
 返事は返ってこなかった。代わりに何か唸っているような
 そんな声が聞こえてきた。
「原田さん!? 開けますよ!」
 言い終わらない内にちづるは襖を開けた。
「原田さん!?」
 部屋に入ると ツンと鼻をつくすえた匂いがした。
 原田はまだ布団にもぐっていたが 夢の中に酔いしれていると言うより
 その体は何やら蠢いているように見えた。
「は 原田さん?」
 ちづるが恐る恐る盛り上がっている掛け布団に手を掛けた。
 急にその手を引っ張られる。
「きゃっ!?」
 ちづるは原田が寝ている布団の中に引き込まれた。
「ちょっ 原田さん!?」
 顔を赤くしたちづるは またいつものように原田がふざけたのだろうと思い
 体を押しのけようと触れると
「(熱いっ!?)」
 手に感じたのは尋常で無い体の熱さ。
「うぅ~ん」と唸る原田をようやく見ると 顔は赤く染まっていて
 その近くの敷布には 少し吐いた痕があった。
「ちづるぅ 左之さん 起き…… 」
 なかなか戻らないちづるを気にして 藤堂が開いたままの襖から顔を出した。
「おぉ!? 何してんだよっ!?」
 布団をかぶっている二人の状況を見て驚愕する。
「平助くん!」
「んあ??」
 あまりの驚きに まともな返事もできない藤堂にちづるは叫んだ。
「松本先生を 迎えに行ってっ!!」


「左之が 病にかかったぁぁ!?」
 永倉はこれ以上ないくらい驚いた。
「今 松本先生が診てくれてるけど 
 うつるかもしれないから 部屋から出てろって」
 今から巡察の為 隊服を着ながら藤堂が状況を教えた。
「でも ちづるちゃんは?」
「あいつは元々蘭方医の娘だから 看病人に適してるって指南されてる」
「へぇぇ なぁ なんだっけ? 左之みたいなのが病にかかる事」
 にやにやしながら永倉が聞いてくる。
「え?」
 刀を左脇に差しながら藤堂は目線を天井に向けて考える。
「えっとぉ 鬼のぉなんとか……  なんだっけ??」


「まさに"鬼の霍乱"だなっ」
 松本良順が消毒した手を拭きながら笑った。
「夏じゃねえから陽の浴び過ぎではないが 昨日の雨と 
 あと何か変な食い物に当たったんだろ」
「巡察からびしょ濡れでお帰りになって お顔色が随分悪かったんです」
 ちづるが周りを片付けながら言う。
「夕餉も召し上がらずに お酒だけ少しお飲みになって休まれたようで」
「その時にはもう 悪くなり始めだったんだろうなぁ」
「私が もっと気が付いていれば…… 」
 自分の気のきかなさに項垂れるちづる。
「お前さんのせいじゃねえよ 薬も置いてくからじきに良くなるさ」
 そう言って帰る松本を 見送ろうとちづるが立ち上がると
「いいっ いいっ ここで  それよりよく面倒看てやってくれ」
「はい ありがとうございました!」
 挨拶を終え ちづるは相変らず呻いている原田を見た。

 夕方になっても原田は
 何も食べていないのに 吐き気だけは湧いてくるようで
 その度 ちづるは原田の背中をさすってやった。
「ち づる すまねぇ」
「そんな気にしないで下さい! 私 慣れていますからっ」
 吐いた後 松本に言われたように 
 砂糖とほんの気持ちの塩を入れた白湯を少しだけ 原田に飲ませる。
 それでも朝より落ち着いてきたように見えて ちづるは ほっとしていた。
「(原田さんが こんなになるなんて)」
 あの大雨に打たれて 風邪も併発しているのだろう。
 それにしても何を食べたと言うのか。聞いてみたかったが 思い出させて
 気分を余計悪くさせてしまうのではと思い止めた。
 ちづるは知らなかったが 平隊士の中にも原田と同じ症状の者がいたという。

「ちづる」
 暫く寝入っていた原田が目を覚まして名を呼んだ。
「はいっ なんですか?」
「お前 ずっとそこにいたのか?」
「はい ずっとお傍についていますから 安心して下さいね」
「…… 」
 原田は何か言いにくそうにしていた。
「どうかなさったんですか? 原田さん」
「いや…… その…… 」
「はい?」
「いいもんだな…… と思ってよ」
 不思議そうな顔をしている ちづるに向かって原田は続けた。
「俺は 今までほとんど病にかかった事なんざ無かったから
 こうやって看病してもらうって事も無くて」
「皆さん 結構丈夫ですものね」
 額の手ぬぐいを冷水ですすぎ硬く絞って また原田に載せる。
「なんか ちづる 嫁さんみてえだな って」
「…… ええっ!?」
 突然の「嫁」発言に驚くちづる。
 いつもの原田にだったら『また そんな冗談をっ』と言う所だが
 熱の所為とはいえ赤い顔をして言われると
 ちづるも顔を朱に染めうろたえ 危うく水を畳にこぼしそうになった。
「そっ そんな事いって 最初は私を斬ろうとしたじゃないですかっ」
 照れ隠しにずっと前の出来事を持ち出す。

『いい顔だ 覚悟が決まったんだな』
 あの日 微笑みながらそう言って原田は刀に手をかけた。
 その後斎藤が制止した為 ちづるは斬られはしなかった。
 はははと原田は笑って
「お前が女だって最初から分かってたさ あん時はカマかけたけどな」
「私凄い怖かったんですよ あの時」
「悪ぃ でもあん時から思ってたよ お前が度胸がある女だって」
「度胸なんて」
「いいやっ これだって もしかしたらうつる病かもしれなかったのに
 最初から 面倒みてくれたじゃねぇか」
「それは当たり前です」
 ちづるは少し目を伏せ暗い表情で続ける。
「私はここで御厄介になっているのに 何も出来なくて…… 」
「なに言ってんだっ」
 原田が急に起きあがって叫んだ。
「俺達がお前にどんなに救われているか 分かってねえんだなっ」
 言い終わると頭が廻ったのか また布団の上に倒れた。
「は 原田さん? 大丈夫ですか!?」
「ちづるぅ お前は本当に よくやってくれてる よ…… 」
 そう言って原田は目を瞑ってしまった。
 ちづるはくすりと笑って 
「ありがとうございます」
 小さく言い 原田に掛け布団を掛け直した。
 とっぷりとした庭には まだ小雨が降っていた。


「ちづる? ちづるっ」
 呼び起こされて目を覚ますと 赤毛の男の顔がちづるの前にあった。
「わぁぁ は 原田さん!?」
 文字通り ちづるは原田の布団の上から飛び起きた。
「そんなに 驚くか?」
 原田は頭を掻きながら呆気にとられた顔をする。
「だっ だって こんな近くに 昨日だって布団の中に…… あっ 」
「ん?」
「原田さん 具合はもういいんですか!?」
 顔色も戻って いつもの様子の原田を見て言う。
「ああ お陰さんですっかりだ」
「よかったぁ」
 ちづるは心底ほっとして 部屋の襖を開け外を見た。
「もう明るくなって 雨も止みましたよ」
「ああ それにしてもよく土方さんが一晩中の付き添いを許したな?」
「それが 『さすがの原田も病なら大丈夫だろう』と おっしゃって」
 その言葉の意味がよく分かっていなさそうなちづるに 
「こんなんなら病にかかるのもいいもんだな」
 苦笑いして原田が言うと
「そんなのだめです!」
 間髪いれずに 頬を膨らませてちづるが言う。
「何か 食べられそうですか?」
「ああ そういや腹減ったか」
「直ぐご用意しますね お粥なのでお待たせしますけど 
 あ その間にお身体を拭いて着替えましょう 新しい手ぬぐい持ってきますっ」
 嬉しそうに部屋を出て行くちづるの背中に
 聞こえないと分かっていながら原田は呟いた。

「お前が 本当に俺の嫁さんだったら…… いいのにな」



           
― 了 ―


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