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みぃ

Author:みぃ
ブログ公開:2012/4/17

この作品に出会えて
本当に良かった。
これからもずっと変わらず
愛してます。(主に副長を♡)

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拾われた恋


【土方 歳三/SSL】ちづるside 「恋の落しもの」翌日の出来事




 早起きは得意じゃない。
 況してや一年の中で空気が一番冷たいニ月の朝。
 ぐずぐずと自分に言い訳してベッドから抜け出せない毎日。
 いつもなら目覚まし時計のベルを止めて また布団にもぐり込む時刻に
 この日は自分が通う学園の職員室前へと既に到着していた。
 それはある物を回収する為。


 昨日の出来事は想定内だったと言うのに
 その結末に傷つくのを押さえられなかった。
 決して邪険にされた訳ではないが 手の小箱は行き先を遮られた。 
 普段も その形の良い唇から甘い言葉は出て来ない。
 だからあの時「気持ちだけ貰っとく」と言ったのは
 彼にしてみれば 随分と気を使ってくれたのかもしれない。 
 その考えに辿り着いたのは ひとり項垂れて家に帰り
 思い出して零す自分勝手な涙を湯船の中に散々混ぜた後
 温かいミルクをひと口飲んで 気持ちが落ち着いた頃だった。
 続いて脳裏に浮かぶ 触れられる事も無かった四角い形をした"想い"。 
 泣き顔を見られないよう上がった校舎の屋上は運よく鍵が開いたまま。
 何となく持ち帰るのを辛く感じて ハンカチで包み置いてきた小箱。
 ペントハウスで陰にはなっているが 誰かに見つかる可能性はあるし
 家庭科の授業で作ったのを忘れていたハンカチの刺繍の名前にも気付くだろう。
 途端に居ても立ってもいられなくなってくる。
 感謝の中に密かに込めた想い…… 。
 置いてきた事を酷く後悔した。 
 

 頑張って起きた甲斐があったと思った。何故なら
 そぉっと覗いた職員室に 教師の姿は何処にも無かったからだ。
 校内の見回りや 部活の朝練の指導に行ったのかもしれない。
 それでもいつもの癖で朝の挨拶を口にしてから一歩入る。
 小さな声にしたつもりだったのに 妙に室内に響いた気がしたのは
 これから"悪い事"をしようと思っている所為だろうか。
 でも置いてきた小箱を取りに行くには
 どうしても先に手に入れなくてはならない物があった。
 学園の屋上は常に開放されている訳では無く
 決められた時間外は ちゃんと入口の扉は施錠されている。
 その日一番最初に開けられるのは ランチタイムの5分前。
 この寒空の下。わざわざ屋上で昼食を食べる者は居ないと思いきや
 開放感を求めてか生徒達は集まり 特に男子は来るのが何気に早かった。
 そんな状況の中 トップで屋上に行けるとは到底思えない。
 だから今しかないのだ。そう自分に言い聞かせて
 壁に括り付けてある スチール製のキーボックスに焦点を合わせ
 入口から遠いその場所まで なるべく音を立てないように歩き出す。が
 あるものに目が行って立ち止る。
 それは こんな事をしなければならない原因を作った教師のデスク。
 この机上には常に書類が山積み状態になっていたが それを前にしても
 淡々と仕事をこなしている姿が好きで 用も無く訪れては
 こっそり眺めてひとりほくそ笑んでいた。
 屋上の鍵が入っていると思われるキーボックスは その後ろの壁にあった。
 うっとりしている暇は無い。使った後に此処へ戻す時間もいる。
 意を決して"砦"を突破すると それまで忘れていた息を吐き出した。

 早速ボックスに手を伸ばしてあれ?と思う。
 おかしい。蓋が開かない。
 以前日直の役目で 化学実験室の鍵を貸りにきた時
 担当の教師は蓋の鍵穴には触れずに 中から鍵を取り出し手渡してきた。
 それなのに今はしっかり閉まっている。この状況は…… よろしくない。
 焦りが体温を一気に上昇させて 巻きつけたマフラーを外したくなってくる。
 もしかしたら開閉にコツがあるのではないだろうか…… 。 
 ふと 田舎の家のTVの映りが悪い時 祖父がモニターの右端を叩くと
 いつも映像が戻ったのを見て驚いた幼い頃を思い出して
 ボックスの右端をコンコンと叩いて 再度蓋に指を掛けた。
「……………… 」
 あ 祖父が叩いたのは左側だったかもしれない。
「なぁ~にやってやがる? 鍵掛かってるに決まってんだろっ」
「っーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
 生まれて初めてだった。声にならない悲鳴を上げたのは。
 恐る恐る後ろに振り向くも もうその声だけで誰なのか分かった。
「ひっ 土方せんせ……い  お おはよう…… ございます」
 驚いて跳ね上がった鼓動は 今度は熱を持って打ち始める。
 寄りに寄って何故この人が現れるのだろう。
「やっぱりお前か…… 雪村」
 職員室の入口に立つ教師は 前髪を掻き上げながら奥へと進んでくる。
「え? やっぱりって…… 」
「何となくな 後ろ姿でお前だと思ったんだよ」
「そ そうですか」
 もしかして何か知っているのかと一瞬ギクリとしたが
 どうやらそうでは無さそうでホッとした。
「で? 校内の鍵が入ってる箱を開けてどうしようってんだ?」
 目の前で足を止め腕組みした後 低い声で問い掛けてくる。
 返事に言葉が詰まった。
 "悪行"を見られた時に どう誤魔化そうかまでは考えて無かった。
 間抜けにも程があるが そもそもこの紫紺の瞳を目にして
 嘘をつくなど考えられない事だ。
「お 屋上の扉の鍵を…… 貸して頂けないでしょうか?」
「屋上の? 何でだ?」
 当然理由を聞かれると分かっていても先に言えなかった。 
「そのぉ 実は昨日忘れ物をしたので取りに行きたいんです…… 」
「こんな早くにか? まだ薄暗えくらいだぞ」
 そう言う先生こそ 今日は剣道部の朝練も無いのに
 何故こんなに早い時間に来ているのかと 聞き返したい所だったが我慢した。
 昨日あんな事があっても その態度はいつもと変わらなくて
 尚更淋しい気分になる。彼にとっては別段 気に留める事では無かったのだ。
「とても…… 大事な物なんです…… 」
 それしか言えず 床に目線を下げて先生の室内履きのサンダルを見つめる。
 鼓動は一向に治まらない。きっと顔も赤くなったままだろう。
 でも今は近くに居る事は辛くて 早く此処から逃げ出したかった。
「そんな大事なモンなのに忘れてったのか? 随分とうっかりだな」
「本当は…… 」
 わざと置いていったんです――― そう言い掛けて止めた。
 正直 言ってしまいたい気持ちも無いではなかった。
 でも結局訳を聞かれて困るのは自分だ。
「お願いします ちゃんと閉めて鍵はすぐお返ししますから」
「そいつは出来ねえ相談だな」
「ど どうしてですか!?」
 驚きのあまり 深々と下げた頭を勢いよく元に戻して叫んだ。
「本来屋上ってのはな 業者以外立ち入り禁止なんだぜ?
 そこを『屋上は"青春の場"だろうっ』なんて言う近藤先生の
 俺達にとっちゃ至極迷惑な計らいに 仕方なく時間を決めて開放してんだ
 まぁ今ンとこ事故も無く 皆大人しくしてるから問題ねえんだが
 時間外に…… 況してやひとり行かせる訳にはいかねえんだよ」
 意地悪で言っているのでは無いのは分かる。
 自由な校風に見えても やはり決まりはあって守らねばならない。
 それは充分理解できるのだが。
「あ 危ない事なんてしませんっ ただ忘れ物を取りに行くだけですっ」
 必死に食い下がる。呆れられてもいい。"想い"は箱の中にあるのだから。
「しょうがねえ…… 特別許可してやる」
「ありがとうございますっ」
 途端 鷲掴んでいた胸からあからさまな安堵の息が出た。
「だがっ ひとりじゃ行かせねえからな」

 なんでこんな事に。
 心の中で呟いて それ程広くも見えないが頼もしい背中について行く。
 屋上へと繋がる階段でふと見上げてみる。
 前に居る人は大人の男の人で 教頭で 古文の教師で 頭が切れて 
 言葉使いは悪いが面倒見は良くて だから生徒からの人望も厚くて 
 そして誰もが目を奪われてしまうくらい綺麗な顔をしている。
 完璧に見えるが ちょっとした事でムキになる子供っぽいところもあって
 それがまた異性にしてみれば堪らない要素なのだろう。
 何故こんな人を好きになってしまったのか。
 いや普通の事なのかもしれない。この人に出会ってしまったのなら誰でも。
 ……そうか。
 例え告白しても 先生は"いつもの事"と思うだけ。
 でもちゃかしたりはせず 静かに諭して諦めさせる。そんな気がした。
 ぼんやりしていた耳に 金属が擦れる音が聞こえて顔を上げた。
「おら 開けたぞ」
 女の子には少し重い扉を 開けた状態で押さえていてくれる。
「あ ありがとうございます」
 その隙間を身体を斜めにして通り抜けようとした時
 上着から煙たさを感じて 先生の匂いだと思ったら軽い眩暈がした。 
 
 一面に厚い雲が広がる空の下に出ると 吐き出す息は白さが増した。
 "仕事"はすぐ片付く。拾った箱をバッグに隠してしまえば
 昨日拒まれたバレンタインのチョコだと気付かれる事は無い。
「あれ?」
 無い…… 。 確かに此処に置いたはずなのに。
「おい 見つかったか?」
「ひゃあ!?」
 いつの間にか近くまで来ていた先生の声に過剰に反応してしまう。 
 先生の方も突然甲高い悲鳴に眉を吊り上げた。
「すっ すみません!」
「いいけどよ で? 忘れモンはあったのかよ?」
「いえ…… 小さな物なので
 もしかしたら烏とかが銜えて行ったのかもしれません」
 ある意味これで良かったのだと思う。どの道後でやけ食いするだけだ。
「小せえって…… これくらいか?」
 "これ"と言われ 自然にそちらへと視線を向けると
 例えられた物に自分の目を疑って瞬きを繰り返した。
「……なっ 何で先生がそれを…… 」
 大きな手に申し訳なさそうに載っているのは 探していた小箱。
「昨日"腹黒なカラス"が落しモンだって俺ンとこに持って来た これも一緒にな」
 烏って…… 腹黒??
 何を言っているのかと思いながら 差し出されたものを見た。
「私のハンカチ…… あっ それも返してくださいっ」
 渡されたのはハンカチだけで チョコが入った箱はまだ先生の掌の中。
 昨日の事を思い出し 気まずさに耐えきれなくて奪う手を伸ばした。
「おっとぉ」
「ひっ 土方先生!? なに子供みたいな事してるんですか!」
 小学生の悪戯っ子が意地悪するように 腕を上へと逸らされる。 
「悪かったよ…… 」
「え」
 謝罪の言葉を口にしたが 片腕は上げたままだった為に
 何について謝られているのか分からなかった。 
「こう言うのは受け取っちゃならねえって思ったんだよ」
 そう聞いて昨日の事かと納得した。正直 蒸し返して欲しく無かった。
「……もういいんです 分かります 先生はすごく"先生"だから…… 」
 生徒の事に一生懸命で。彼を好きになった理由のひとつが
 拒絶されるに充分な理由でもあった事に気付かなかった自分が愚かだった。
「いや 俺が教師ってのは理由のひとつだが それよりも相手がお前だからな」
「わた し…… だから?」
 他の女子生徒なら受け取ったと言う事か? 
 受け取って貰えなかった理由が"お前"だからと言われ 
 そんなに嫌われていたのかと思うと 我慢出来ずに伏せた目が滲んで来る。
「軽い気持ちじゃねえんだろ?」
「……  え 」
 問い掛けに頭がついていかなくて 潤んだ瞳のまま土方先生を見た。
「世話になったからって言うなら 充分世話してっからな 遠慮なく貰う
 だがこの箱の中身は本当にそれだけなのか?」
 天空へ高々と上げた小箱を やっと胸の前まで持って来て眺める。
 自分の分身のような箱を見つめられるのは何だか恥ずかしい。
「うっ えっと…… 何を仰られているのか よく分から」
「俺の勘違いなら寧ろその方がいい これで話しは仕舞いだ」
 低い声はコンクリートに酷く冷たく響いた。
 白々として来た屋上で 周りを取り巻く冷えた空気が身を刺して来て
 その鋭利な先端は心の中まで到達し 痛みに息が出来なくなる。
 苦しい 苦しい 苦しい
「どっ どうしろって言うんですか!? まだ16歳でっ 生徒でっ
 成績も中くらいで マネージャーの仕事も時々ヘマするような私は
 立派な大人の土方先生に"感謝"の気持ちとしてしか贈れないんですっ」
 逆ギレもいいとこ。幼さをさらけ出してしまい今すぐ消えたかった。
「かっ 返してください!!」
 目の前まで下ろされた今なら 容易に手は届くと必死で腕を伸ばした。
 なのに小箱はまたすぅっと掲げられ それに釣られて追い掛けると
 柔らかい感触が頬に伝わった。
「?」
 また小箱は取り戻せなかった。
 だがそんな事よりも 何故紫のネクタイがこんな目先に在るのかと
 不思議だったし 身体も痛いくらい窮屈で 何より
 覚えのある煙たい匂いがした。
「やっぱまずいな…… こうして抱きしめちまうと離せなくなる」
 土方先生の声がどうしてかすぐ耳元で聞こえる。
「生徒はどんな奴でも可愛い だからお前の事もそれだと思ってた」
 すごく"先生"な土方先生。
 男女関係無く厳しく接するけど しつこいくらい面倒見がいい。
 今時珍しい熱血教師。そんな先生をいつの間にか好きになってた。
「ちづる?」
「っ!?」
 静かに発せられる低めの声が心地良くてぼんやりとしていた中
 聞き慣れない名前が自分のもので 驚いた勢いで顔を上げると 
 視界全部が土方先生で埋め尽くされた。
「え!? あっ すっ すみません!」
 正気に戻った時 てっきり自分が土方先生に抱きついたと思った。
「(あれ?)」
 なのに急いで離れようとしても何かに押さえられていて動けない。
 それどころか 更に締めつけてくる。
「土方先生?」 
「今だけ てめえが"先生"だってのを忘れっから」
 また耳に届く優しい声と温かい吐息。
 土方先生に抱きしめられてる? 自分は夢を見ているのだろうか。
「お前が俺に言いたい事…… 今なら聞いてやる」
「え…… 」
 いいの? 決して口にはしないと誓った想い。
 夢なら覚めてしまう前に伝えたい。  
「その箱の中には…… 先生へ感謝の気持ちと…… 」
 この想いは真実だから 心からそう思うから
「土方先生を…… 好きと想う気持ちが入っています」
 先生の顔を真っ直ぐに見て告白した。
 呆気に取られた。一瞬そんな表情をして先生は眉根を下げた。
「ずるいけどな 俺のような立場の奴から言う訳にはいかねえから」
「はい 土方先生が"先生"だから 私は好きになったんです だから
 "先生"を忘れないでください 言わせて頂いただけで嬉しかったです
 これからは勉強やマネージャーの仕事をもっと頑張ります」
 返事なんて思ってもみない。同じ時代に出会えただけで幸せなのに
 想いを伝える事まで許して貰えたなんて 昨日まで考えもしない事だ。
「あ~ そうきたか」
「はい?」
 先生はさらさらな髪を 空いてる手の方で乱暴に掻き乱し項垂れる。
「俺の気持ちは聞きたくねえのか?」
 そのまま顔だけこちらに向けたから 鼻先が触れる程の距離で目が合った。
「(あわわっ) せっ 先生の気持ちですか?」
 何故かまだしっかり抱きしめられている為に逃げようも無く と言うより
 その紫紺の瞳から逃げたら勿体無いような気がした。
「お前をどう思ってっかだよ」
「私をって…… 生徒ですよね?」
 さっき『生徒はどんな奴でも可愛い』って。
「ったく さっき"先生"だってのを忘れるっつたじゃねえかよっ」
 少し呆れたように吐き出して 次いで腕に力が込められた。
「(え?え?え?)」
「お前を可愛いって感じてたのは生徒だからと思ってた けど
 それを抜きにしても可愛いって気付いちまったんだよ
 そしたらお前を自分のモンにしちまいてえって思うようになって…… 
 いつの間にか俺は女としてお前を見てた 好きになっちまってたんだよ」
「…… う うそ…… 」
 やっぱりこれは夢だ。
 昨日拒否された反動で自分の都合のいい夢を見てるんだ。
「ああ!? 嘘なんかじゃねえよ ……って教師が威張って言う事じゃねえがな」
「すっ すみませんっ でも信じられなくて」
 ああ こんな夢ならずっと見ていたい。でもきっとそろそろ覚める頃だろうな。
 そう思った時 おでこに冷たい柔らかいものを感じた。
 
        ちゅっ

「え………… っ!?!?!?!?!?!?!?」
 なに?今の??でも訳が分からないのに耳にまで熱が回ってくるのは分かる。
「信じたか? ったく
 こんなんでそんなになっちまうなら 唇なんかにしたら気絶しそうだな」
「くっ くちびる!? あぁわっ わっ わっ」
 嬉しいけど先生の言う通り想像しただけで倒れそうになる。
「フッ 今は襲わねえから心配すんな でもな今日からお前は俺のだからな
 今まで周りにいた野郎どもとは一線置いて付き合えよ いいな?」
 恐いくらい真剣な顔で言い付ける。こんなに嬉しい束縛があるだろうか。
「は はいっ (それって…… 先生が私とお付き合いしてくれるって事?)」
 もういっぱいいっぱいで頭が追いついて行かない。 
「さみぃな 戻るぞ」
 先生に腕を離された途端淋しくなる。それが伝わったのか今度は手を繋いでくれた。
「おっ 珍しいな薄明光線じゃねえか」
 気付けば太陽が昇り始め 厚い雲の切れ間から光が漏れている。
「わぁ 綺麗…… 」
 まるで光の梯子を使って天使が下りてきそうなこの光景を一生忘れないと思った。

「あ チョコレート…… 」
 渡したい人の所にちゃんと届いたものの気になる。
「あ? 食っていいんだろ?」
 甘い物が苦手だと聞いた土方先生の為に甘さを抑えたつもりだけど。
「私が作ったので美味しくないかもです 形も不格好ですし…… 」
 御惣菜を作るようにはいかなくて 今更ながら不安になってくる。
「面白がってる"腹黒カラス"に自慢してやろうと思ってよ」
 先生は悪人のようにニヤリと笑う。
「その"腹黒カラス"って誰なんですか? この事知られたら…… 」
「他言したりしねえ人だから大丈夫だ(よな?) まぁその内教えてやるよ」
「はい 楽しみにしてます」
 ちょっと怖い気もするが その人のお陰で先生とこうなれたと思うと
 お礼を言いたいくらいだ。それにしても誰なんだろう?
「コレも楽しみにしてろよ?」
「な 何をですか?」
 土方先生に届けた人に ハンカチの刺繍も見られたのかと考えていて
 問い掛けにピンと来なくて聞き返した。
「来月の"お返し"」
 そう言って小箱を見せる。
「あっ これっぽっちにそんなのいいんですっ 先生はお忙しいんですから」
 他意があると思われたくなくて わざと小さく作ったチョコレート菓子。
 3月は学園の教頭としてとても多忙な筈だ。
 そんな時に余計な事で手を煩わせて 邪魔をする存在になりたくない。
「いや…… たっぷり返してやるからな」
「はぁ…… あ ありがとうございます  ……???」
 なんだろう。
 凄く嬉しいのに 同時に感じる微かなこの不安感…… ?
「すっかり冷えちまったな 職員室であったまってけ」
「はいっ」
 そう言って 優しく手を引いてくれる。
 その背中にずっとついて行きたいと思った。



                  

― END ―


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