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みぃ

Author:みぃ
ブログ公開:2012/4/17

この作品に出会えて
本当に良かった。
これからもずっと変わらず
愛してます。(主に副長を♡)

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素直になれなくて


【沖田 総司/屯所】



「どうして いつもそうなんですかっ」

 ちづるは思わず荒い声を上げた。
 わなわなと肩を震わせ 拳を強く握りしめていた。
「(何故この人は分かってくれないのだろう)」
 彼女は目の前の男に対して 
 悔しくて 悲しくて もどかしくて堪らなかった。
 男はいよいよ掴みかからんばかりの彼女をよそに
 我関せずといった様子で 何が面白いのか
 口元をにやにやさせている。
「聞いているんですか!? 沖田さんっ」
 ちづるは腹の立つ原因となった男の名を叫んだ。
「なにをそんなに怒っているのさ? ちづるちゃん」
 そのちづるを見ようともせず 
 まだ雫が垂れ落ちる髪を手ぬぐいで挟みしごいていた。
「こんな寒い日に頭なんか洗って どうゆうつもりなのか聞いているんですっ」
「どうゆうって痒かったから さっぱりしたかっただけなんだけど」
 上目遣いで沖田は やっとちづるに視線を向ける。
「さっぱりはいいです でもお湯も使わず水で洗うなんてどうかしてますよ」
 この京の屯所の中庭の木々も すっかり葉を落として
 風が吹き抜ければ 思わず身を縮めてしまう 
 明日明後日には 初雪もちらつきそうな白い息を吐く季節。
 洗い場の水で髪を洗っていた沖田は 
 たまたまその場に来たちづるに見つかってしまった。
 そして沖田が自分の部屋に戻るまで後をついて来て
 その間彼女はずっと文句を言っていたのだ。
「だからぁ お湯沸かすの面倒だったって言ってるじゃない」
「なら私に一言言いつけてくれればよかったじゃないですか!」
「え~?」
「沖田さんは普通のお体じゃ無いんですよ! 
 それなのにわざわざ具合を悪くするような事をして……っ 」
 ちづるの言葉が急に止まる。
 先ほどまでふざけた表情の沖田が一変 鬼神のそれのように
 恐ろしい物になっていた。
「!?」
 ちづるはその身を固くして 顔を強張らせた。
「あ…… 」
 さっきまでの勢いはどこへやら 
 放たれた殺気に 視線を逸らす事も出来ないでいる。
 沖田はそんな彼女を見て
 満足したかのように元のにやけた顔に戻した。
「ふっ どうしたの? ちづるちゃん」
 そう言われてちづるは 顔を真っ赤にして下唇を噛みしめ
「もう…… いいです…… 」
「え?」
「お 沖田さんなんか もういいです!!」
 そう吐いて 部屋から脱兎のごとく走り去って行った。
 あまりにもの勢いで閉められた襖がガタガタと揺れるのを沖田は眺め
 誰もいなくなった部屋で呟いた。
「心配なんて…… 面倒くさいよ…… 」



 ちづるは怒っていた。
「(どうしてあの人は自分を大事にしないのだろう)」
 近藤局長や新選組の為なら命も惜しがらないのに 自分の事となると 
『今日はなんのお菓子食べようかなぁ』くらいしか頭に無いのだ。
 ……でも療養中の身となった今 彼は表だって
 新選組の戦力にはなれない事にもどかしさを感じているのだろう。
 ちづるはそう思うと 沖田に罵声を浴びせた事を後悔した。
「いなくならないで欲しいから…… 」
 言うとも無しに口から出した言葉に 自分を不思議に思っていると
「何やってんだ? ちづる」
 後ろから声を掛けられびくりとする。
「ひ 土方さんっ」
「なんだ? お前泣いてんのか?」
「え?」
 言われて初めて 自分の頬を濡らすものを認識する。
「いえっ埃に目が入ってしまって!」
「ああぁ? そりゃ逆だろぅが!?」
「あ あはは そ そうですね あの何か御用ですか?付け届けとか」
「いや そうじゃねえよ…… お前さっき総司の部屋から出て来たな」
「あ…… はい…… 」
 見られていたのかと目を伏せるちづる。
「なんだ またあいつに何か言われたのか?」
「いえ私が悪かったんです 体の具合が悪いのを 
 沖田さんが一番認めたくないのに 私が…… 」
 沖田さんは死ぬのが怖いのでは無い。
 きっと労咳なんかで死ぬのが嫌なのだ。
 新選組の一番組組長として 華々しく散る覚悟のある人。
 なのに安静を余儀なくされて 気持ちの持って行き所が無いのだろう。
 だから私に当たっても それは仕方の無い事なのだ。
 ちづるが思案している様子を見ていた土方は
「総司は」
 と言って 沖田の部屋の方に顔を向けながら続ける。
「まだ小さい時分に 父上殿を亡くしてな」
「え?」
「体の弱い母上殿の代わりに 姉さん夫婦に育てて貰って 
 その後母上殿も亡くなって…… 」
 遠い日を思い出すかのような土方を ちづるは見ていた。
「武士の家に生まれたとは言え 生計はかなり苦しかったらしい 
 このままでは共倒れと 近藤さんの家へ奉公人として出されたんだ」
「まだ本当に子供でな」と土方は加えた。
「大事な人が次々いなくなって 今度は自分も家から追い出された
 ベソかいて小便もらしてばっかりで 
 でもそんな総司を 近藤さんは丸ごと受け止めてやったんだ」
「それで沖田さんは 近藤さんをあんなに慕っておいでなのですね…… 」
「性格が歪んだのは俺の所為かもしれねえがなっ」
 そう言って珍しく笑う土方。
「ここがあいつの唯一の居場所だ…… 」
「土方さん…… 」
「すまねえな 皆に黙っているのは辛いだろ?」
「いいえ そんな…… 」
 ちづるは土方を見る。
 この人は分かってくれている 自分の気持ちを。
「私少しでも 沖田さんにここにいて欲しくて」
「ありがとよ」
「でも沖田さんには迷惑みたいで」
「んな事ねぇよ あいつも…… 」
 一拍おいて沖田の部屋の方から 視線をちづるに戻して
「そんなに馬鹿じゃねえ」
 と続けた。
「おっと俺は出かけんだった! 寒いからお前も早く中に入れよ」
「はいっ いってらっしゃいませ!」


 ちづるは土方を見送りながら 再び沖田の事を想った。
「(どうして あの人なのだろう)」
 剣術に秀でていてまだ若く 前途洋々なはずなのに……
 よりによって労咳なんて。神様も随分酷い事をなさる。
 出来る事なら私の命を分けてあげたい。
 10年分 ううん5年でもいい 
 新選組の晴れ舞台を 近藤さんと踏ませてあげたい。
 例えその終わりが死であろうとも 沖田さんは幸せな筈だ。
 ちづるは 今度は自分でも分かる涙を流した。
 同時に雪が降るかと思われた空から ぽつぽつと下りてくる雫に気付き
 そちらに顔を上げた。

「雨…… 」

 ぽつりと呟き手をかざす。
 何故今日は沖田の事ばかり 考えているのか。
 はっきりしない答えを探すように 雨の中濡れるのも構わず
 ちづるはたたずんでいた。
「あれぇ 濡れちゃだめなんじゃないの?」
 突然掛けられる聞きなれた声に逡巡するちづる。
 沖田が傘を差してそこに立っていた。
「さっきは僕の事 頭を濡らしたって怒ってたくせに 
 自分は雨の中何してんのさ」
「お 沖田さん…… 」
 まだ乾ききっていない髪を いつものように縛らず垂らしたままの沖田。 
 ちづに近づいて傘の中に入れてやる。徐に
「これは雨の雫なの? それとも…… 」
 と言いちづるの頬のそれを指でついっとすくい取った。
「お 沖田さんには 関係の無い事でしょ!?」
 赤くなる顔を見られて ちづるはばつが悪そうに顔をそむける。
「ふぅん」
 つまらなさそうな顔をした沖田が急に身をかがめた。
「ごほっ がはっ」
「沖田さん!?」
 傘を落としうずくまる沖田のその背中に ちづるは慌てて手を添える。
「なっ なぁ~んてね ははっ驚いた?」
 ちづるには沖田が肩で息をしているのが分かった。
 これが芝居では無いという事も。
 傘を拾い上げ ちづるが沖田に言う。
「沖田さん部屋に戻りましょう 何で外なんかに出て来たんですか?」
「髪紐が」
「紐?」
「髪を洗った後上手く結べなくて…… 」
「そんなの 屯所内の誰かに頼めば…… 」
「……うん でもなんでかな? 今はキミにやって欲しくて」
「え?」
「つい探しちゃったんだよね キミをさ」
 何を言われているのかという風のちづるに 沖田は優しく笑って
「やってくれる?」
 と頼んできた。ちづるは暫くその微笑みに見とれていた事に狼狽して
「しっ 仕方ありませんね 結んであげますよ」
 恥ずかしさを強気の言葉で誤魔化した。
「ふ 偉そうだね」
「知らないのですか? 私は偉いんですよ 皆さんの頭が上がらないほど」
「確かにある意味ではね…… 土方さんも余計な事を」
「はい?」
「いや あんまり生意気な事言うと…… 」
「斬る!んでしょ? はいはい分かってます!」
 沖田の背中を押して急ぐように促す。
「本っ当にキミには」
「え? なんです?」
「ううん 何でもない (敵わないよ  ちづる……  )」



 雨は二人が部屋に戻ってからも しとしとと降り続いていた。






― 了 ―


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