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みぃ

Author:みぃ
ブログ公開:2012/4/17

この作品に出会えて
本当に良かった。
これからもずっと変わらず
愛してます。(主に副長を♡)

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空気読まない土方先生


【土方 歳三/SSL】



午前8時13分 私立薄桜学園・職員室――

 この日 教師達は自分の席に着くなり電話の応対に追われていた。
「原田です おはようございます。……あぁ~ そうですか。わかりました お大事に」
「インフルエンザか?」
 短いため息を吐いて出席簿に記入する原田に 土方は眉間に皺を寄せて問い掛ける。
「ああ 流行り始めたな。俺のクラスは昨日早退した2人と今の生徒で4人目だ」
「俺ンとこは今日だけで4人だぜ。数日前から休んでる奴らを合わせたら…… 7人か
 3年は卒業式近くまで来ねえが 1年生も合わせたらかなりの人数になるんじゃねえか?
 体温が平熱まで戻ってもすぐには登校できねえしな」
 同じく2年生を受け持つ数学教諭の永倉は タオルを締めた頭をガリガリと掻く。
「この先もっと増えるだろうから そろそろ学級閉鎖も念頭に置かねえとな…… 」
 教頭の土方は思案顔でそう呟きながら 壁にある月間予定表の黒板へ目を向けた。
「おっと また来なすった。メールで…… ちづるからだぞ」
「(ちづる?)」
 その名前が耳に入ると 土方の視線は瞬時に予定表の黒板から原田へと移った。
「まさか ちづるちゃんもか!?」
「休み…… なのか? 雪村」
 デスクの下で隠していた競馬新聞を 驚いた拍子にうっかり持ち上げてしまった永倉に
 気づきもせず 土方は原田からの返事を待った。
「でもインフルじゃなくて普通の風邪らしい。熱が高いのと喉を痛めて酷い声だから
 メールですみませんって 謝る必要なんかねえのに…… ん? 待てよ…… 
 あいつ家で独りかもしれねえぞ。親父さんが遠方で開かれる学会に出席するから何日か
 留守にするって言ってた…… 大丈夫なのか?」
 当然のことのように原田に訊ねられた土方が言葉に詰まると 再び着信音が響く。
「今度は俺だワ。はいっ こちら永倉! ……おお南雲か。今日休む? 具合が悪いって
 おまえ普通に元気そうじゃねえか! おい? もしもし!? あの野郎切りやがった!」
「……あ~ 南雲が休む本当の理由は"ちづる"だな」
「ちづるちゃん?」
 一方的に通話を終わらせた生徒へ掛け直そうとした永倉は 原田の言葉で指を止めた。
「離れて暮らして名字も違うがあの二人は実の兄妹だ 双子の兄である南雲にとって
 溺愛してる妹が独りで苦しんでいると知ったら放っとけねえだろ。なあ? 土方さん」
 にやにやとしたり顔で絡んでくる原田を土方は無言で睨む。 
「そうかもしれねえけど マジなズル休みだったらどうすんだよ」
 永倉はそんな同僚達を訝しく思うよりも 南雲のことのほうが気掛かりだった。
「しょうがねえだろ。迎えに行って引っ張って来るわけにもいかねえし……
 つか新八! 生徒の名前に"ちゃん"付けすんじゃねえって言ってんだろうがっ」
 以前から何度も注意をしていた土方だったが 何故か今は無性に癇に障る。
「い~じゃねえか 学園で初めての女子生徒だったからそれで呼び慣れちまってんだよ
 ……けど妹かぁ いいよなぁ妹ちゃん❤ ちづるちゃんみてえにかわいい子なら尚更っ」
「新八が兄貴だったら 妹もさぞ苦労させられるだろうな」
 原田は架空の妹にすら同情し 永倉に哀れみを含んだ眼差しを向ける。
「なんだとぉ 左之っ そりゃどういう意味だ!?」
「うるせえぞ新八っ おまえ…… 今日提出締め切りの書類できてんだろうな?」
 パソコンの向こう側から鬼と見紛うほどの土方の刺すような視線が覗く。
「…………アレって今日までだっけ? だっ 大丈夫! 大丈夫だから!!」
 永倉はブルブルと全身が震え上がるのを押さえながら数学準備室へと逃げて行った。
「なんだ 知らなかったのか」
 原田は永倉の姿が職員室から見えなくなると 土方のデスクに向き直して声を掛けた。
「あ?」 
「とぼけんなよ。さっきから心配でしょうがねえって顔に出っぱなしだぜ」
 そんなのわかる筈がないと思いながらも 土方は自分の顔面をぐるりと撫でる。
「付き添い人が居るなら大丈夫だろ。第一 勤務中の俺に何ができるってんだよ」
 原田の言う通り土方は知らなかった。ちづるの病気も 彼女の父親が遠方にいることも。
 担任でもない教師が 一生徒の事情を熟知していることはあまりない。だがその二人の
 関係が"恋人同士"となると風向きが変わる。
「メールで 『大丈夫か?』 の一言でも喜ぶんじゃねえか?」
「あいつが俺にじゃなくおまえに連絡してきたのは担任ってこともあるが 俺を気遣っての
 ことなんだよ。それをわかっててこっちから連絡なんかできねえだろうが」
 助言などされなくてもできるならとっくにしている。それでも我慢すると決めた土方だが
 苛つく自分に気づいていた。
「お~ お~ (愛が)深いねえ。でもよ 南雲がちづるの家に居るかどうかはっきりして
 ねえんだぜ?(俺が確かめてもいいが この人ちづるのことだと反応が面白えからな)」
「それは…… 」
 確かちづるの部屋は2階にあると聞いた。高熱でふらつく身体で階段を下りたら…… 
 一気に不安になった土方は堪らず携帯端末を手にした。その瞬間――
「そっちにも病欠連絡か?」
 問い掛ける原田に メール表示画面が開いたまま端末が手渡された。


From:南雲薫
To:土方
今日学校休むから
01/22 08:26
――――――――――――――――――
ちづるの看病は俺がするのでご心配なく!
あと顔見たいだけの来訪は迷惑なだけ。
いい大人なんだから空気読んでよね!
――――――――――――――――――

「教頭相手に堂々と欠席連絡とは南雲らしいな。わからないでもない理由なんだから
 新八にも正直に言やぁいいのに。取り敢えずは安心したんじゃねえか? にしても……
 将来"兄貴"になる奴は中々手強そうだな」
 余程可笑しかったのか 原田は肩を揺らしながら端末を返す。
「面白がってねえでさっさと仕事しろっ」
 原田にちづるとの関係を知られてからというものの 今回のように事ある毎にからかわれ
 その度うんざりとする土方だったが 自分で蒔いた種だということに気づいていなかった。



午後7時42分 雪村家・玄関前――

「あのさぁ メール届かなかった? それとも読んでないの?」
 一緒に生まれ 目鼻口元や仕草まで同じなのに どうしてこうも可愛げがないのか。
 ちづるとそっくりな南雲薫を目の前にして土方はしみじみそう思う。
「ちづるの容態はどんな感じなんだ?」
 それでも今日一日仕事が疎かにならずにいられたのは 南雲がこうして彼女の看病を
 してくれたお蔭だと感謝し 来る途中のコンビニで買った差し入れを渡す。
「あ どうも…… って 人の話聞いてる? さっき薬呑ませて今眠ったと…… 」
「上がらせてもらうぞ」
「…… え?」
 予期していなかった行動に 一呼吸分反応が遅れた南雲の横をすり抜けた土方は
 上り口で革靴を脱ぐとそのまま2階へと続く階段を静かに上がり始めた。
「ちょっと先生ってばっ 勝手に入るなよ! ちづる眠ったばっかなんだから!」
 我に返った南雲がささやき声で喚きながらその後を追いかける。
「ちづるの部屋はどっちだ?」 
「ハァァ…… しょうがないなあもう。顔見るだけにして話し掛けたりしないでよ!」
 呆れ果てた顔で右側へと指を差したドアを土方が開けると さすがに気まずいのか
 或いは諦めたのか 南雲は一緒に入ることはせず1階へ下りて行った。
 初めて入ったちづるの部屋は 隅に置いてあるテーブルランプのぼんやりとした灯りの中
 大小様々なぬいぐるみがあったり 本棚には書籍の他に音楽CDも並んで女子高校生
 らしさを感じたが 意外なことにベッドではなくカーペットに布団を敷いて寝ていた。
 加湿器がのるテーブルとヒーターの間を忍び足で近づきゆっくりと腰を下ろす。
 南雲の言う通りちづるは眠っているようだったが 荒い呼吸を繰り返して苦しげだった。
「(昨日の部活でなんだか顔が赤いと思ったが あン時もうおかしかったんだな…… )」
 気づけば 今は微光の中でもわかるほどの火照った頬に触れていた。  
「ん…… 」
「(まずいっ 起こしちまったか?)」
 僅かに開いた瞼から覗く潤んだ瞳と目が合ってしまう。 
「ひじ かた せんせ…… ?」
 土方の名前を口にするちづるの声は本当に酷かった。あの可愛らしい声がこんなにも
 変わるものなのかと信じられないほど。呆気にとられた土方が話し掛けようとした時
「そっか…… 夢ね ハァ」
「(あ?)」
「土方先生が ハァ 居るわけないもん ハァ」
「(寝ぼけてんのか?)」
 目を瞑ったちづるの顔を覗き込んだ時 ふと体温計が目に入った。南雲がスイッチを
 切り忘れたのか38.8°Cと表示が出たままだった。いつ測ったものなのかわからないが
 ちづるは未だ高熱の所為で意識が混沌としているらしかった。
「でも ハァ うれしい 夢でも会えて フフ…… 」
 現実だと言い掛けた土方だったが 面白くなりそうな気がして口をつぐむ。
「夢だから ハァ 言っちゃおうかなあ」
「(何だ?)」
「私を 土方先生のぉ ハァ お嫁さんにして…… くださ ぃ…… 」
 言い終えて満足したのか ちづるはそれきり眠りに入ったようだった。 
「(先にプロポーズされるとはな それも寝言で)」
 不謹慎だと思いながらも笑いが込み上げてくるのを我慢できず口元を押さえる。
 ちづるの気持ちを受け入れてから半年になる。勿論当時は生徒との許されない交際に
 躊躇したが 今はもう土方にとって手放すことなど考えられない存在になっていた。
「(嫁さんにしてやるから 早くよくなれ)」
 心で告げると土方はちづるの前髪を撫で分けて額にキスをした。
  
「まさかとは思うけど…… ちづるに"ちゅう"とかしてないよね?」
 最後の一段を下りる寸前 威圧感のある声に視界を彷徨わせる。
「………… おまえ明日も休むのか?」
 階段の手すりの影から出てきた南雲は 鬼モードになった時の土方に匹敵する形相で
 教師の立場でありながら可愛い妹をたぶらかした憎き男を睨みつける。
「何時間目になるかわからないけど綱道おじさんと交代したら行くよ ……って
 そうじゃなくて "ちゅう" し て な い か 俺のほうが訊いてんだけど!?」
「すまねえが あいつのこと頼むな」
 幾ら心配でも泊まり込んで看病できる筈もなく南雲に頭を下げる。 
「は? 他人のあんたに頼まれたくないんだけど。ちづるは俺の妹だから!
 離れて暮らしてても家族だから! ていうか人の話聞きなよ! それでも教師かよ!」
 大声で怒鳴りたいのをグッと堪え 南雲は再びささやき声で抗議する が……
「数年後には俺もおまえの家族だぞ。仲良くしようぜ? "お兄ちゃん"」
「なっ!? とっとと帰れ! このロ(ピー音)コン野郎!!!」
 些か歪んだ方向に妹を溺愛する兄の叫びが夜空に響いた。




– END –







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