カテゴリ

PageNavigation 2.0

Designed by 石津 花

お慕いしております(●´ω`●)

✿✿✿ ✿✿✿         ✿✿✿

リンク

ようこそ♪

プロフィール

みぃ

Author:みぃ
ブログ公開:2012/4/17

この作品に出会えて
本当に良かった。
これからもずっと変わらず
愛してます。(主に副長を♡)

QRコード

QR

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
                        web拍手 by FC2

願い事


【土方 歳三/夫婦】




 聞き慣れない音がして 夕餉の支度をしていたちづるは勝手場の戸口から外へ出た。
 庭に面する玄関先で佇む人影。こちらは見慣れた背中でホッと一安心する。
「お帰りなさいっ 土方さん」
 嬉しさを隠し切れない声で呼ぶと 手拭いで額の汗を押さえる夫が振り返った。
「おうっ 今戻った」
「熱い中お疲れさまでした 作物の様子はどうでした? ちゃんと実が生りて…… え?」 
 土方しか入らなかった目に 漸くそれが見えたちづるは言葉を失う。
「山までこいつを切りに行って遅くなっちまった」
 手にしていた手拭いをひょいっと首に引っ掛けて 土方は足元の笹を持ち上げる。
「…………あ! 今日って」
「七夕だろ?」
 うっかりしたと両手で口元を隠す妻にしたり顔をする夫。
「まぁ 戻ってくる途中の家で見掛けて思い出した俺も人のこと言えねえがな」
「こう言っては失礼ですけど意外です 土方さんは七夕とか興味ないと思ってました」
「勿論そんなもんはねえよ けどな こんな人里離れた家で殆ど俺としか話をしねえで
 お前も退屈だろ だから少しでも気が紛れるかと思ってよ こういうの好きだろ?」
「はい 楽しいと思いますけど これとは関係なく私は退屈なんてしてませんよ?」
 寧ろいくら年月を重ねても 未だ土方に対して慣れない部分が多いと思う。
 余所の妻達も夫が傍に居るだけでこんなに動悸が激しくなるのだろうか?
「屯所で生活していた時も何とかの日だって言っては 平助や新八を味方につけて
 俺んとこに恐る恐る許可を貰いに来てたガキを思い出してな」
 言い終えてくつくつと笑う土方に ちづるの頬がぷくりと膨らむ。
「たっ確かにあの頃は子供でしたけど 私なりに一生懸命だったんですよ」
 理不尽な理由で捕らわれ自由を奪われたちづるは 人斬り集団と暮らす日々の中で 
 彼等に対する感情が恐れから信頼へと変わり 世話になっている自分ができることを
 考えた時 暗くなりがちな屯所内を少しでも明るくしたいと季節の七夕に便乗して
 ささやかな宴会を開くのはどうだろうと思いつく。
 ちづるは品数が多くなるよう安い食材を選んで買い 代わりに手間を掛け調理した。
 自分の勝手でするのだからと 普段通り渡される材料費でやりくりし頑張る彼女に
 自然と平助や原田が手伝うようになり 沖田や斎藤もついでを装い差し入れたりした。
 酒の出ない宴会に始めはぼやいた永倉も ちづるの味付けに舌鼓を打った後いつもの如く
 隣の平助の膳を狙い 原田が煽り 騒ぐ三馬鹿に土方の雷が落ちて 井上が仲裁に入り 
 斎藤は黙々と食べ 沖田は高みの見物 そして近藤が笑い広間は賑やかだった。
 続きの縁側の柱に括り付けた笹に 願いを書いた皆の短冊が葉と共に夏風に揺れる様を
 ちづるは今も覚えている。
「結局毎回土方さんを不機嫌にさせてしまいましたけど…… 」 
 当時を思い出してばつが悪そうに身を縮ませる。
「別に責めちゃいねえよ 平助と新八の飯の奪い合いは奴等のお家芸みてえなもんだったし
 お前に許可を出したのは俺だしな せっかくの美味い飯をゆっくり味わいたかっただけだ」
 土方の言葉に忽ちちづるの頬が染まっていく。
「すぐお風呂の用意しますねっ」
 赤面した顔を見られたくないのと 夫を早くさっぱりさせてあげたいのとで
 その場から駆け出そうとしたものの腕を掴まれ ちづるは短い悲鳴を上げた。
「夕飯作ってたんだろ? 風呂は俺がやるから任せろ 屯所で食ったような美味いのを頼む」
「は はい…… 」
 土方の柔らかい微笑みに ちづるの抵抗は無駄に終わった。



「お風呂いただきました あ…… 立ててくださったんですね」
 部屋に夫の姿が見えず縁側へと出ると 庭に立てられた笹と共に土方を見つけた。 
「丁度いい添え木があったんでな地面に打ち付けて立ててみた 立派なもんだろ?」
「ありがとうございます でもせっかく洗い流した汗がまた…… 入り直しますか?」
「いや すぐ濡らした手拭いで拭いたから大丈夫だ それより」
 縁側に腰掛けた土方から手渡されたのは朝顔が描かれた短冊。
「わぁ…… 綺麗な短冊ですね 土方さんはもう書かれたんですか?」
「ああ まだ笹には付けてねえけどな…… ほらお前もっ」 
 歯切れが悪い土方を不思議に思いながらも ちづるは「はい」と返事をして
 差し出された小筆を手に取った。
「………… こうしてみると願い事ってひとつしか思い浮かばないものですね」
 それ以外は考えられず ちづるは諦めたように笑む。 
「どんなのか聞いてもいいか?」
 まさかの問い掛けに全身が固まる。
 それでもこの透き通った菫色の瞳に見つめられるとどうにも拒めない。
「あの…… "土方さんがいつまでも息災でありますように"って…… 」 
 せめてもの悪あがきで ちづるは蚊の鳴くような声で願い事を明かす。
「ちづる…… ありがとよ だがそこはお前も一緒じゃなきゃ意味がねえぞ
 そういや屯所にいた時は何て書いたんだ?」
「父が無事であるようにと…… 最初は別のことを書こうとしたんですけど」 
『ガキが生意気に人の心配なんかすんな 自分のことだけ書いとけ』
 迷った末にやはり新選組の前途を祈ろうとしたちづるは そう土方に睨まれ
 素直に愛しい父を想い願った。
 思えば 己にも他人にも厳しい土方の些か荒っぽい優しさに惹かれ始めたのは
 あの七夕の日からのような気がする。
「言ったな そんなこと」
 記憶を掘り起した土方は郷愁を感じてか 薄雲が広がった夜空を仰ぎ見る。 
「何故私が書こうとしたのが新選組のことだとわかったんですか?」
 当時その理由を聞くことすらしなかったのを思い出し訊ねた。
「お前だからな 何となくそんな気がしたんだろう」
 それは簡略な答えのようでいて ちづるの心を震わすまでに充分過ぎた。
「でも嬉しかったです 私の中にあった願いを引き出してくださって」
「その為に江戸から京までひとり出てきたんだからな…… そんなお前を俺達は」
「斬らずにいてくださいました」
 決して知られてはならない"秘密"を見てしまった小娘に向けた刃を収めた土方。その後
 鬼らしからぬ振る舞いを目にする度 それが彼の本来の姿では? と思うようになった。 
「保護して 共に歩むのを許され 今は傍に居させていただけて…… 」
「途中置いて行かれましたけど」ちづるの満面の笑みに 土方は苦笑いで返した。 
「幸せです とっても」
「ホントか?」
「本当です この上ないくらい」
「あ~ そうか…… そりゃ よかった…… 」
 素直な気持ちを伝えたと言うのに 隣に座る夫は不服そうに眉間に皺を寄せる。
「ど どうかしましたか?」
 自分が何かまずいことを口にしてしまったのかと ちづるは怯えつつ訊ねた。
「俺の願い事なんだが…… 」
「はい」
「それが叶ったら俺達は今よりもっと幸せになれる」
「今よりもっとですか!? 私には恐れ多いです…… 」
 蝦夷にて土方の小姓として受け入れて貰えたことで ちづるの唯一の願いは叶った。
 もう望むものはない程満たされた彼女は 土方に想定外の抱擁と告白をされ
 今は妻として仕えている日々…… これ以上の幸せとは一体何なのか。 
「そもそも七夕の願い事ってえのは 手習い事が上達するようにっていう願掛けだから
 結局は自分自身の努力でしかねえんだ」
 土方の願い事は手習いに関連するものではなかったが 敢えて黙っていることにした。
「ただこの場合 いくら必死になって励んでも俺だけじゃ成し遂げられねえんだ」
「勿論お手伝いします! 私は何をしたらいいですか?」
「ん…… それはな…… 」 
 近づいてきた端整な唇はちづるの頬を掠め ほんのり色づく耳の前で止まる。
 夫から伝えられた言葉に 歳の離れた妻は呼吸を忘れる程驚き真っ赤になって狼狽え
 感極まって溢れ零れる涙も構わず 土方の腕の中で何度も頷いた。




― 了 ―




旧暦とか色々すっとばしってことでどうかひとつ!←



関連記事
                        web拍手 by FC2

<< ちぇりぃ★はぁと【14】 | ホーム | ちぇりぃ★はぁと【13】 >>


 BLOG TOP 


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。