カテゴリ

PageNavigation 2.0

Designed by 石津 花

お慕いしております(●´ω`●)

✿✿✿ ✿✿✿         ✿✿✿

リンク

ようこそ♪

プロフィール

みぃ

Author:みぃ
ブログ公開:2012/4/17

この作品に出会えて
本当に良かった。
これからもずっと変わらず
愛してます。(主に副長を♡)

QRコード

QR

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
                        web拍手 by FC2

浴衣と花火


【土方 歳三/SSL】




 視線が刺さる。
 そちらに振り向けば 急いで夜空へと見上げる素知らぬ横顔。
 なんだ?と訝るも 単に偶然だったのかと眼差しを元に戻す。
 目の前の暗闇には弾けた音を響かせて咲く火の華々。
 形を変え 色を変え 観る者を楽しませてくれる。



 花火に特別興味は無かった。
 毎年仕事帰りに運転中の車の中で 渋滞を作る諸悪の根源に眉根を寄せたものだ。
 とは言え 花火師が手間暇掛け作製した花火玉がパっと咲く姿は紛れも無く綺麗だし
 一瞬で散る様も風情の極みで一句詠みたくなってくる。
 そんな風に意識が変わったのも 隣の空席に納まった生徒…… では無く
 愛しい彼女 ちづるのお陰だろう。
 イベント事に敏感な若い世代。なのに教師と言う立場の相手を気遣って
 文句ひとつ口にしないどころか 代わりにふわりと微笑んでみせる。
『自分の為です ずっと土方先生のお傍にいたいから…… 』
 お互い顔を合わすだけなら教室や剣道部の道場など 校内での機会はままあるが 
 太陽の下での外出は 付き合い始めて1年経つ今迄でほんの片手ほどしかなく
 ちづるとは専ら自宅マンションの部屋で過ごしていた。



 あれはまだ夏休みに入る前の事。
 マネージャーを務める彼女は 部員の悪ガキ共から花火見物に誘われたが断った。
 何か予定があるのか?と問い掛けると 彼女は珍しく些か不機嫌な顔をして
『一緒に観たいと思うのは土方先生だけです…… 』
 ぽつりと呟かれて 己の"鈍さ"を痛感した。
 正直頭に無かった。最初からそれは無理な事だと思っていたからだ。
 だがこんな顔を見てしまっては 考え無い訳にはいかないだろう。
 いかないが…… どうしたらいいのか。煙草を銜えリビングで途方に暮れていると
 ベランダへ通じるサッシから真っ暗な光景が目に入って それを思い出した。
 却ってがっかりさせるかもしれないその提案に ちづるは予想外にも喜々とした後
 何かを思いついたように 大きく見開いた目を向けてきた。



「さっきからなんだ? ヒトの事盗み見やがって」
 顔は夜空に向けたまま話し掛けると 隣で短い悲鳴が上がった。 
「すっ すみませんっ その…… 先生がとっても…… 」
「俺がとってもなんだ?」
 改めてちづるに向き合うと 化粧もしていない頬がほんのり染まる。
「その本麻で仕立てた浴衣がお似合いで つい見惚れちゃいました」
「そうか? 着慣れないモンだから自分ではよく分からねえが
 着せてくれたお前が言うなら ちったあマシなんだろうよ」 

『浴衣を着て花火を見たいんです』 
 ひとつお願いしてもいいですか?とちづるは前置きしてそう続けた。
 自分達にとって大勢の人が集まる所に行くなど 一番避けなければならない行いだが
 我慢させてばかりいるのも気の毒で 苦し紛れに浮かんだ提案を彼女に伝える。
『ベランダから見る事も出来るんだが…… 』
 そう。忘れていたが確かに見えるのだ 打ち上がる花火がこのマンションからも。
 但し 遠くにと言う曰く付きだが…… 。
 それでも楽しみですと顔を緩めた彼女が懇願したのが『浴衣を着て欲しい』だった。
 そんな物は持っていないと即答しそうになった口を噤んだ。無いなら買えばいい。
 普段我儘の欠片も言わないちづるの願い。それくらいしてやらなくてどうする。
 その週末の予定は急遽"浴衣の買い物"となった。
 勿論ちづると出掛けられる筈は無く 迷った末に通販でもいいかと思っている所に
『ふたりで行っても大丈夫なお店があります!』 と彼女にきっぱりと言い切られ
 何処からそんな自信が出てくるのか不思議だった。

 1時間程車を走らせ到着した店は 一目で老舗と分かる呉服屋だった。
 ちづるは 今時硝子に店名が入った手動の引き戸を躊躇せず開け奥へと入って行く。
 どうしたもんかと迷い店先で立ち尽くしていると 迎えに来た彼女に手を引かれ
 褪せた状態に歴史を感じる紺色の暖簾を潜った。その頭を上げた瞬間
『ようこそ お越しくださいました』 和服姿の女の人に声を掛けられた。
 女性はちづるの亡くなった母親の妹だそうで この呉服屋に嫁いできたのだと言う。
『道理で何処かでお見掛けしたような気がしました』 挨拶の後に間抜けな事を言って
 ふたりに声を上げて笑われた。それ程彼女と彼女の叔母は面差しが似ていたし
 声に関しては電話口で聞いたら 第一声はまずどちらなのか分からないだろう。
 などと悠長にしている場合では無い。まだ高校生の姪が30過ぎの男を連れて来たのだ。
 さぞ根掘り葉掘り質問攻めにされると思いきや 俺の事を自分の通う学校の教師で
 しかも付き合っている相手だとまでちづるが教えていたと知り 目が点になった。
 更に 叔母は来店した際のしっとりとした挨拶から一変
『ちづるの彼氏ってすっごいイケメンじゃないのっ』 学園で見る女子生徒のようなノリで
 照れるちづるとワイワイ盛り上がっているのを見て 気が抜け思わず噴き出した。

 既製品もあるけれど…… 言いながら彼女の叔母は奥から反物を持ってきた。
 知識は全く無いが 広げられた生地は一目で上等品だと思った。
『わぁ…… 素敵』 素直な感想を述べた姪に笑んだ後 腕を差し出すよう促され
 言われるがままにすると ちづるの叔母はそこに浴衣の生地を垂らした。
 さらりとした肌触りと感じた事の無い風合い。鼠色だが地味に見えないのは
 "雪晒し"処理を施している為 発色が良いからだと言う。
『シャリ感と言うんですけど 生地を握ると少し硬くて反発するので肌に貼りつかない
 だから涼感があって…… 麻は汗を蒸発させますし浴衣には最適なんですよ』
 説明を聞いてただ感心するばかりだったが ふと思う。これ程の物ならば……
『あのね叔母さん…… 花火の見物会場に行ける訳じゃないの……
 だから申し訳ないんだけど こんなにいい御品じゃなくて既製品で充分だと思うの』
 俺の心の声が聞こえたのか。ちづるが気遣って代弁してくれる。
『いや折角だし これで作って頂くよ この肌触りを知ったら他のは無理な気がする』
 それは見栄を張ったのでは無く正直な気持ちだった。それよりも心配な事は
 古くからの店でクレジットカードは取り扱っているだろうか? だった。
 まだ疑いの目で見るちづるに 叔母が反物を巻き直しながら話し掛ける。
『良く考えて?ちづる 土方さんはあなたの周りの男の子達とは違うのよ?
 立派な大人の男の人なの それなりの品を身に付けないと土方さんが笑われてしまうわ
 だって今年は駄目でも 来年は浴衣を着て堂々とふたりで花火見物に行くんだから……
 ですよね? 土方さん』
 問い掛けのようであり決定事項のようでもある言葉に ちづると顔を見合った。
 無言ながら 本当に?と不安げな表情をする彼女に 『ええ 必ず』 と返事をし約束した。
『なら この土方さんの浴衣は私からのプレゼントにさせてくださいねっ』
『え!?』 っとふたり同時に叔母へと振り向く。それは困ると何度言っても聞いて貰えず
 結局 ありがたくご厚意に甘える事にした。



「今更だがホントに良かったのか? 只で貰っちまったんだぞ?」
 届いてみれば仕立てた浴衣の他に 献上柄の角帯と桐下駄まで同梱されていた。 
「叔母は土方先生に作ってあげたかったんだと思います すっかり魅了されてて ふふ
 それに先生は私の為に浴衣を買ってくださったじゃないですか」
 いい歳したおっさんの浴衣姿など 冷やかされるだけで面白くもない。
 代わりと言う訳ではなく ちづるに自分が選んだものを着せてみたかった。
 気持ちを汲んでくれたのか 彼女の叔母はその代金はちゃんと受け取ってくれた。
「お前には言って無かったが この浴衣と一緒に手紙が入っててな…… 」 
「手紙? まっ まさかやっぱり浴衣代を払え…… とか?」
 一瞬で顔面蒼白になるちづるに どれだけ面白い叔母君なのかと突っ込みかけた。

ちづるは幼い頃に母(私の姉)を亡くしました。
父親で事足りない時は私が面倒を看てきたので、我が子のように思っております。
我慢し過ぎるくらい我慢強い子です。でも本当は弱い事を本人は分かっていません。
ですが最近はだいぶ解れたように思います。きっとあなたのお陰なのでしょう。 
どうかどうか、これからも愛してやってください。そして幸せにしてやってください。
あなたの事も必ず幸せにする筈です。心から一途に。(着付け習いも頑張ってました)
あの子を、ちづるを宜しくお願いします。

追伸
ちづるの父親に結婚を反対されたら 私が味方として参戦いたしますので
遠慮なく仰ってください。
土方さんが私と幾らも歳が変わらないと聞き とても親近感が沸きました。 
 
 最後の文章に軽くショックを受け ちづるに手紙の内容は教えない事にした。
「お前を俺にくださるそうだ」 
「え?」
 涼しげな風が彼女の耳を塞いで髪を揺らした。
 纏めようと手を伸ばす先に白い脰が見えて 思わず目を逸らした途端
 浴衣の袖を掴まれる。
 唇より雄弁に訴える瞳に 不安にさせた自分が不甲斐無く思えて苦く笑う。
「そうじゃねえよ 寧ろ逆だ 俺が見立てた浴衣を着たお前が堪らなく綺麗で…… 」
 くすんだ梅鼠色の破れ格子に青紫や白の朝顔が咲く 淡い藤色地の浴衣を引き寄せる。
 薄い生地の所為で 華奢な身体が尚の事儚げに感じ強く抱きしめた。 
「おい ここは花火みてえに俺を見上げるトコじゃねえのか?」
 胸に顔を埋めたまま 微動だにしないちづるに文句を言う。 
「~~~~~~~~~~~~~っ
 でっ でも今日の土方先生はいつもよりもっと素敵なので恥ずかしくて…… 」
 ただ可愛いと思うだけで済ます余裕は持てず 今すぐちづるが欲しかった。
「おっ ちづるっ 最後の花火だぞ!」
「えっ? 本当で…… むぅっ!?」
 甘い 甘い…… 何度味わってもまた欲しくなる震える唇。
「(くちゅ) ……っぷあぁぁぁ ハァ…… 酷い 嘘じゃないですか もう…… 」
 遠くでまだ続く一瞬の光と一拍遅れて届く爆音に 騙されたと悔しそうな剝れ面。
「酷えのはどっちだ 俺に"おあずけ"食わすとはいい度胸じゃねえか」
 ったく。
 一年後の今日はこんなもんじゃすまさねえ 覚悟しとけよ。


「……いや 一年は長過ぎだな…… 」
「何がですか?」
「ちづる……
 お前まさか今ので俺が満足したと思ってるんじゃねえだろうな?」
「え? えぇ!? 花火がまだ…… ちょっ 何っ帯解いてるんですか!?」
「この際手加減は無しだ お前は着付けが出来るしなっ」
「こんな事の為に習ったんじゃないですっ いやあああっ」





― END ―




関連記事
                        web拍手 by FC2

<< ちぇりぃ★はぁと【9】 | ホーム | ちぇりぃ★はぁと【8】 >>


 BLOG TOP 


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。