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みぃ

Author:みぃ
ブログ公開:2012/4/17

この作品に出会えて
本当に良かった。
これからもずっと変わらず
愛してます。(主に副長を♡)

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徒然に


【土方 歳三/夫婦】




 風が戸板を叩いたか 或いは腕に感じた微かな振動の所為か。
 その家の主は褥中での深い眠りからゆっくりと紫紺の目を覚ました。
 窓も無い寝間に襖の隙間から薄明かりが漏れ 土方は夜明けが近い事を知る。
 次いで少し視線を下げて 艶やかな黒髪を目に入れほっと安堵し
 緩んでしまった両腕で再び抱きくるむ。
 あたたかい―――
 華奢な形でありながらも その身体は最近頓に女らしさを増し
 ふわりとした感触を与えてくれる。

ちづる……

 心の中で妻を呼ぶ。
 屯所時代には 周りの者に比べ多くは口にしなかった名だ。
 おいだの お前だの 酷い時は餓鬼などと呼び捨てた事もあった。
 それに自分でも気付かない感情が混じったのは何時の頃からか。
 今はその名前すら愛おしくて 呟くだけで咽の奥が熱くなってくる。
 
 胸の中の繰り返される安らかな寝息と 妻の枕代わりの腕に感じる痺れで
 どうやらまだ生きているようだと実感すると 苦い笑いが沸いてくる。
 明日も…… こうやって目覚める事が出来るのか。
 羅刹の血を薄める北の風土の効果か 確かに調子は悪くないが
 そもそも事前に兆しのようなものが在るのかも分からない。
 ふと 平助と山南が思い浮かぶ。
 仙台城での羅刹兵との戦いが終わった後 苦しげな声を上げたふたりは
 土方の目の前で 元の姿から一瞬でまた白髪に赤眼へと変異し倒れた。
 あの時 灰となってしまうまでに彼等は言いたい事を全て言えたのか。
 そして自分もその土壇場で ちづるに想いを伝えられるだろうか…… 
 誰よりも愛している――― と。

 隣に居るものと何の疑いも無く土方に寄り添い眠るちづる。
 口にせずとも 彼女も同じ不安を抱えているに違いない。
 出来るなら せめて目覚めの時には傍にいてやりたい。
 何処で消えても 悲しませるのは同じだと分かっているけれど。
 いよいよの時が来る前に きっと感じるものはあるだろう。
 
 何度でも言おう。愛している。
 ちづる 俺はお前だけをずっと愛している。  

 進んで自らを斬りつけてまでも 献身に支え続けてくれた彼女は
 決して気持ちを押しつける事はせず ただひたすらに後ろをついて来た。
 女としての普通の生き方を願って 想いを仕舞い込んで突き放したにも関わらず
 直向きな眼差しのまま蝦夷に現れた。 
 さすが"江戸の女"と呆れながらも もう腹を括るしかないと思った。
 ちづるの全てを己の一部にしようと。
 やがて戦争が終結し 陸軍奉行並の土方は表向き現世の者で無くなり
 身を隠す為に人里離れたこの家で ちづると暮らし始めた。
 心配させた分 甘えさせなかった分 辛い思いをさせた分  
 穏やかな幸せを与えたい この命が間に合う限り。そう心に誓った。

 ところが小姓の習慣が未だ抜けないのか 歳の離れた新妻は
 慣れぬ畑仕事にも労を厭わず 朝から晩までじっとしている事が無い。
 せめて夜は早く休むよう 繕いものを仕掛ける手を引っ張り
 暴れる身体を抱き上げ 無理やり奥の寝間へと運び褥に転がして
 お前が共寝しないなら俺も寝ないと鼻先で脅し静かにさせる。
 頬を赤くして困った顔を目にすれば そのまま寝てしまうのを惜しいと思うのは
 惚れ抜いてる側にとっては当たり前の反応だろう。
 その度膨れっ面を向けられても 結果的に熟睡へと導くのだから詫びはしない。
 確かに昨夜は少々無理をさせ過ぎたようではあった。 
 だが何度言っても直らない土方さんと呼ぶ癖が あの一瞬だけ震える声で
 歳三さんと絞り出す時の 何とも言えない甘さを知ってしまえば放せる筈も無い。
 
これ以上ないくらい私は幸せですよ――――

 そう紡いで眠りについた桜色の唇に誘われそっと口づける。
 照れた風にはにかんで胸にすり寄って来たちづるに 起きたのかと思えば
 規則正しい寝息に変わりは無く なんだつまらねえと拍子抜けした土方は
 妻のあまり高くは無い鼻を潰してみたり 柔らかい頬を引っ張った。
 途端に赤ん坊のようにむずかって身を捩る様に 可笑しさが込み上げる。
 俺にこんな餓鬼みてえな事をさせるのも ちづる お前だけなんだぞと
 目を覚ました時彼女に伝えたら 人の所為にするなと怒るだろうか。
 それとも落っこちそうな目ん玉を屡叩くか。
 どちらにしても土方を喜ばせる事に変わりは無い。
 




― 了 ―









「黎明録」で千鶴がいなくて飢えた反動で書きました。\(`;ω;´)/チヅルクレクレ~



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