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みぃ

Author:みぃ
ブログ公開:2012/4/17

この作品に出会えて
本当に良かった。
これからもずっと変わらず
愛してます。(主に副長を♡)

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ふたりでお茶を。


【土方 歳三/現代夫婦】



 泡を流した後 最後に残った小皿を食器用の水切りカゴへ入れたちづるは
 小さな達成感に包まれながら 急須と茶葉 そして大き目の湯呑茶碗を手に取った。
「お待たせしました…… 」 
 差し出された湯呑みからほわりと立つ湯気と共に 新茶の新鮮な香りが鼻孔を擽る。 
「ああ すまねえ…… 」
 眺めていた雑誌を放した手で持ち上げ 土方は躊躇する事なく流し込む。
 その温度は毎回飲み頃になっているので 恐る恐る口を付けて試す必要が無い。
 彼はごくりと咽を鳴らし はぁ~と満足気な溜め息を吐いた。
「何度も言うようだが この茶はホントに美味えな」
「我が家で唯一の"高級品"ですものね」
 心の底から嬉しそうな夫の感想に 歳の離れた若い妻も自然と笑顔になる。
「お前の淹れ方が上手いんだろ コツを聞いたら店主が丁寧に教えてくれたもんなぁ
 幾ら上質な茶っ葉でも 淹れ方に寄っちゃあ折角の味を引き出せねえからな」 
 結婚する前から通っていた 老舗茶舗の主人に試飲を勧められた一杯。
 ひと口飲んで…… まだ新婚の夫婦は驚いた顔を見合った。
 その後 店の主人から茶葉の値段を聞き出し 夫婦は別の意味でまた驚くのだが
 この日本茶を自宅でじっくり味わいたいと言う想いを断ち切る事が出来なかった。

「なんだ? お前の湯呑みはどした?」
 揃いで買った片割れが見当たらなくて問い掛ける。
「あ 私はいいです えっと…… もう少しお台所の片付けもありますしっ」 
 ちづるが胸の前で両手をふるふるとさせると 機嫌が良かった眉間に皺が現れる。
「まさか茶っ葉の残りが少なくて 遠慮してんじゃねえだろうな?」
「いえっ お茶の葉はまだあります…… 」
「ならなんで……  そういや最近一緒に飲んでなくねえか?」
 一番の弱みである紫紺の瞳で探るように見つめられ ちづるは思わず目を逸らす。
「そのぉ お お腹がいっぱいなだけで…… 」
「ちづるっ」
 嘘をついても夫には直ぐに分かってしまう。
 日々生徒と接して"教師の勘"が働くのか 或いは自分の嘘のつき方が下手なのか。
 恐らくどちらもなのだろうと 恫喝に身を縮ませたちづるは観念した。
「こんな…… 高価なお茶を飲んでいいのは先生だけです」   
「あ?」
 言われた意味が分からず 土方は怪訝な顔を益々深くする。
「このお茶は 寝る間も惜しんで一生懸命働いている先生のような方が飲むものですっ。
 まだ高校生だった私に 先生は結婚が決まっても大学へ進む事を後押ししてくださって
 凄く嬉しかったですけど そしたら学費までお世話になる事になってしまって……
 そんな負担ばかり掛けている私が このお茶を飲むのは贅沢過ぎます!!」
 一気に捲し立てたちづるは 自分が情けなくて涙を滲ませた。
 そんな彼女を前に土方は瞠目して一瞬言葉を失うも 我に返って彼女を睨んだ。  
「このっ バカ野郎が!」
 彼は言い終わるより早く幼な妻の腕を引っぱり その身体を自分の胸へと押し付けた。
 ちづるは短い悲鳴を上げて それから驚きのあまり瞑った目をゆっくり開けると
 彼女の両腕を掴んで覗き込む土方と目が搗ち合う。それは怒っているようでいて
 とても寂しそうな風にも見えた。
「お前はもう俺の生徒じゃねえんだぞ? 名前も"土方ちづる"になった
 正真正銘土方歳三の妻だろうがっ 旦那がてめえの女房の面倒みるのは
 当たり前の事だろ!」
「でもっ 私がご迷惑を掛けているのは本当ですし…… 」
 
          ちづる 卒業したらすぐ俺のところに来い

 傍に寄り添って ずっと一緒にいたかった。その願いがやっと叶う。思い起こせば
 もっと他に考え無くてはならない事があったのに 浮かれた気持ちしかなかった。
 大学生になる自分が土方と結婚すれば 生活はどのようなものになるのか。
 合格祝いの席で礑と気付いたちづるは 自分の迂闊さにほとほと呆れ返った
 項垂れるちづるを見て 土方も眉根を下げ短い溜め息を吐く。
「いいか?お前の進学を止めなかったのは 親父さんの希望でもあったって事もあるが
 何より俺がそうして欲しかったからだ 結婚したからって家ン中の事ばっかりじゃ
 つまんねえだろ? 俺は毎晩のように帰宅時間が遅えし 休みも滅多に取れねえしな
 そもそもお前を傍に置いときたくて 大学の卒業を待てなかった俺が悪いんだけどよ 
 何つってもお前はまだ十代と若い 普通だったらこれからが遊び盛りな年頃だ
 進路指導の時になりたいモンがあるって 目ぇキラキラさせてたのを覚えてる……
 だから俺の嫁になったからって その夢を諦めさせるつもりは無えぞ?」
 まだ片想いをしていた1年生の秋。
 将来希望する職業の欄に書いた[幼稚園教諭]に 土方は『お前にぴったりだな』と
 穏やかに微笑んだ。それからも親身になってちづるからの相談に応じ やがて
 土方は彼女の瞳の中に見つけてしまう。自分に向けられた 熱く 一途な想いを。 
「せめてバイトさせてくださいって 何度もお願いしてっ」
「その件に関しても何回も話し合っただろ? 取り敢えず1年目は慣らす期間で
 学業と家事だけに専念する 様子で無理が無ければその先はバイトもいいだろって
 それにな…… 資金面の事もそんなに心配しなくて大丈夫なんだぜ?
 お前の親父さん…… 雪村さんがな ふたりの結婚を許してくれた後 俺に
 娘の為に蓄えたものだからって寄越してくれてな」
「お父さんが? それって…… 」
 初めて耳にする話に ちづるは不安な表情で土方を見上げる。
「俺もお前の旦那になる身として意地もあったから 丁寧にお断りしたんだが
『親が子供の為に用意していたものです』と仰られて…… そう聞いたら拒めねえなって
『未だ未だ娘の面倒は自分がみるものだと思っていました』と本音を零されてな。
 だから預かる名目でありがたく受け取らせて貰った ……子供を想う"親心"ごとな
 もちろんっ 手を付ける気は毛頭ねえし そうならねえように俺も頑張るつもりだが
 いよいよって時が来ても 早速お前が困るような事は起こらねえから安心しろ」
 茶を飲む事すら躊躇う程 自分に掛かる学費をそんなに気にしていたとは。それでも
 彼女の性格を思えば容易に思い付く事だったのだ。土方はその健気さに半ば呆れながら
 ちづるにそう思わせてしまった己の不甲斐無さを反省した。
「そんな お父さん 私には何も…… 」
 込み上げてくる感情に我慢出来ず 言葉を詰まらせたちづるの華奢な肩が
 腕の中で小さく震えるのを感じ 土方は彼女の全身をくるむように抱き締しめた。
「お前には黙っててくれって頼まれたんだ
 自分に似て頑固な性格の娘は 絶対受け取らないだろうからってな
 もっとお前を手元に置いときたかっただろうに 最初から反対する事もしなかった
 こんな男に可愛い娘盗られちまって 内心じゃ腸が煮えくりかえっていた筈だ
 結婚の承諾を貰いに行った時の親父さんの平静さは 俺には絶対真似出来ねえワ」

 あの日 ちづるの父である雪村は 土方に対して怒鳴る事も無視する事もせず
『娘を宜しくお願い致します』と静かに言い 頭を下げた。
 その姿勢が元に戻るまで 土方も頭を上げられなかったのは言うまでも無い。
「自分の娘が 私みたいだったらですか?」
 何やら高校卒業と同時に結婚した自分が 親不孝者と言われたような気がして
 ちづるは恨めしそうに夫の顔を覗き込む。
「おうっ おっさんと結婚するなんざ言ってきやがったら 全力で阻止する!!」
 鼻息を荒くしてとても冗談に聞こえない勢いの土方に ちづるはくすりと笑う。 
「無駄ですよ」
「あ?」
 きっぱり言い切った言葉に 土方は見開いた目を彼女に向けた。
「その子は彼の事が大好きで 例え土方先生のような父親に反対されたとしても
 彼について行く事を諦めたりしません そして年月を重ねて年上の彼が
 よぼよぼのおじいちゃんになった時のお世話も 今から楽しみにしているんです」
「ほぉ…… 言ってくれるじゃねえか
 ならそれまで何があっても その野郎の傍から絶対離れねえってこったな?」
 微笑を浮かべた流し目で覗かれて ちづるは一瞬で頬を朱に染めたが
 徐に土方の胸へとその頬を寄せた後 彼の白いシャツに手を添えた。
「はい…… 最後のお見送りもしっかり努めようと彼女は思っているんです」
「そりゃまた気の長え話だな…… 」
「過ぎてみればあっと言う間かもしれません 当然立場が逆になる事だって…… 」
「ちづる…… 」
 添えられていた手がシャツを鷲掴む。
 覚悟があると言いながら 心の奥底に在る不安な想いを拭い切れないのだろうと
 土方はちづるの形のいい頭を撫でて 前髪を広げた額や瞼にキスを繰り返した。
「だから一日一日を大事に送りたい どんな些細な出来事も忘れないように
 ふたりの大切な思い出だから…… 」
 気丈に微笑んでみせるちづるに 土方は今度は濃厚な唇を押し付ける。
「ふ…… んんっ」
 自宅のリビングと言う誰に遠慮する必要も無い空間で 大きな水音を響かせて
 幼い妻が漏らす甘い吐息に酔いながら ひたすら貪欲に彼女を求めた。
「そうだな  じゃあ取り敢えずお前の分の茶を淹れて来い」
「ハァァ…… あぁ え お茶…… ですか?」
 頭の中を真っ白にされた状態から ちづるは覚醒する時間が足りずに聞き返した。
「茶だってな ふたりで飲んだ方が美味えんだぞ?
 余計な気ィ使ってねえで茶っ葉使え! 空になっちまったらそれで仕舞いだ いいな?」
「土方先生…… ありがとうございます
 じゃあお言葉に甘えて 先生のおかわりをお持ちして私も頂きます」
 嬉しそうに言い 土方の膝から降りていそいそとキッチンへ向かう。 
「ああ 茶ぁ飲んだら風呂入っから用意しろよ」
「分かりましたぁ 先生のお着替えとタオル置いときますねぇ」
 リビングからの指示に 自分の湯呑みを出しながら伸びやかな声で返事をする。 
「そうじゃねえよ "お前の用意"をすんだよ 俺と一緒に入るんだからな♪」
 瞬時 陶器がぶつかる音がして 次いでカウンターから怖々とした赤い顔が現れた。  
「あ あのぉ お風呂は恥ずかしいので もう無理って前の時に言った筈ですが…… 」
 彼女は動揺を隠さず 身を守るようにチュニックの胸元を両手で掴んだ。
「"大切にしたい思い出"の数は 多いに越した事はねえだろ?
 あと 今日は"ベッドでの思い出"も増やすから そのつもりでいろよっ」
 ニヤリと笑んで 今日二度目の流し目を妻に送る。
「それ…… え ベッド?…… え!? ちょっ ちょっと待ってください!
 だって明日はしないって仰ったから 昨日あんな事まで頑張ったのにっ
 結局朝方まで寝かせて貰えなくて…… や 約束が違うじゃないですかっ!」
「心配ならいらねえぜ?
 昨日とは違うのにすっから なるべくお前の体勢が苦しくならねえヤツで」
「そっ そう言う心配をしてるんじゃありませんっ!!」
 赤くなったり青くなったり忙しい幼な妻を 今夜はどう可愛がろうか。
 土方は楽しくて仕様が無い様子でくつくつと笑い 湯呑みに残る茶を啜った。




― END ― (て言うかオワレっ)



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