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みぃ

Author:みぃ
ブログ公開:2012/4/17

この作品に出会えて
本当に良かった。
これからもずっと変わらず
愛してます。(主に副長を♡)

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たまには


【土方 歳三/SSL】



 今日は間に合う筈だ――――
 エンジンキーを回した手を目の前に持って来て たくし上げた袖口から覗く
 重厚感のある腕時計が差す数字に 土方は安堵の息を吐いた。
 
 若い癖に物分かりが良過ぎる恋人は 不平や不満をおくびにも出さないが
 流石に腹に据え兼ねているに違いない。
『今日こそは大丈夫だ』そう言っておきながら 今まで何度反故にしてきただろうか。
 自宅の玄関ドアを剥がす勢いで開けても そこに彼女の姿は見つからず
 代わりにノートから破り取られたページが 書いた者の気持ちを含んで
 淋しそうに木製のシューズボックスの天板に置かれているだけだった。
 伝達方法にメールを選ばないで わざわざメモ書き風の手紙にするのは
 言い出せない想いを その中に隠しているからでは?と思えてならない。
     逢いたい ただ逢いたい
 見えない文字が見えた気がして遣る瀬無くなる。
 採点されるでもないのに ちゃんと罫線上に丁寧な文字で書かれた内容は
 まず電車の時間なので帰る旨を知らせた後 冷蔵庫の中に作った惣菜がある事を伝え
 そして最後に必ず 土方の身体を気遣う言葉で締め括られていた。それは
 食事を疎かにしたり 徹夜をする彼の悪い癖を知り尽くしている彼女の心からの願いだ。
 何より気に病んでいるのは彼を放さない煙の存在。  
 まだ学生の恋人は 時折思い出したようにやんわりと禁煙を勧めてくるが
 ヘビースモーカーである土方は その返事として首を縦に動かしはしなかった。
 彼女の気持ちはありがたいし悲しませたくは無いのだが 彼にとって
 そこはどうしても譲れない事だった。

 
 幾度ものすっぽかしの罪滅ぼしに何をしたら――――
 問い掛けた所で 普段から欲の欠片も見せない彼女が素直に口にすると思えず
 自分で考えるしかないかと眉間に皺を寄せて カーオーディオのスイッチを入れると
 ラジオ番組のパーソナリティーにいきなり問題を出された。
『リスナーの皆さんっ 今日は何の日かご存知ですか?』
 今日? 今日は5月の…… 31日。早えな。今年も5ヶ月終わるってか……
 答えがずれているのにも気付かず 教師として多忙に追われる日々を振り返る。
『今日5月31日は"世界禁煙デー"なんだそうです 日本では6月6日までの1週間が
 禁煙週間となっていますので 愛煙家の方もこの機会に少しだけでも煙草の本数を
 減らしてみては如何でしょうか? さて 次はリクエストにお応えして…… 』
 誰がそんな余計な日を作ろうと言い出しやがったんだ?
 苦虫を噛み潰したように機嫌の悪い顔をして土方は 自分の帰りを待つ彼女が
 このいらぬ記念日の存在を知らない事を祈り アクセルを踏み込んだ。



「お帰りなさいっ 土方先生」
 花笑むちづるを前に一瞬身体が固まった土方は 徐に彼女の背中側へ首を伸ばす。
「な なんですか??」
 その奇妙な行動に 何処かおかしいところがあるのかとちづるは自分を見回した。
「いやな 嬉しそうにブンブン振ってる"シッポ"の先が見えた気がしてよ」
「シッポ!? そんなの生えてませんよっ」
 否定しながらも ちづるは慌てて制服のスカートを手で押さえる。
「そうか? 俺の"シッポ"ははち切れそうだけどな…… 」
 上着を脱ぐのももどかしく すぐさま彼女の身体を両腕でくるむ。
「なっ 何言ってるんですかぁ もう…… 」
「ちづる…… ?」
 名前を呼んでも俯いたまま返事をする恋人の頬に 身を屈ませて口づける。
 それだけで放せると思っていた土方は 数週間ぶりとは言え
 たった一度の柔らかな感触に 速効で甘い酔いが全身に回ってしまい 
 どうにも我慢出来なくなってくる。
「え? せんせ…… 」
 待ち惚けに慣れてしまったちづるにとって 土方の傍にいられるだけで幸せだった。
 だから頬に軽く触れた程度のキスでも 彼女を満足させるに充分だったのだが
 背中に優しく回された腕は 逃がさないとばかりに強い力で締めつけてきて
 頬を離れた唇は髪の奥に隠れている耳を弄って 艶めかしく動かされる。
「んんっ あ…… 」
 ちづるの髪に埋もれながら 土方は耳朶を食み吸い上げ舌を這わせる。
 繰り返される荒い呼吸に真白な柔肌を撫でられて 彼女は身を震わせた。
 味わっているかのような土方の唇は 軽いキスを続けそのまま下りて行く。
「や…… せんせぇ」 
 校内で目にしている赤いリボンのフックを 手の感覚だけで取り外し放って
 白いシャツの胸元を広げるにも 大して時間は掛からなかった。
 蕩かされたように力が抜け どうにかその場に立つちづるを支えながら
 土方は彼女のブラジャーのストラップを噛んでずらし 膨らみに唇を押し付けた。
「あん!」
 きつく吸い付かれて 肌にちりりっと小さな衝撃が走った。その痛みすら嬉しくて
 ちづるは自分の胸に顔を埋める土方の頭を愛おしく抱きしめた。
 ちゃんと"印"が付いたのが分かると 土方はようやくちづるの前に顔を戻した。
「誰が見るって訳でもねえけどな」
 自己満足と言われればその通りで。
 ちづると付き合うようになって 自分はかなり独占欲が強い男なのだと気付いた。
 禁断の恋故に 世間に隠しながらの窮屈な交際。それでも彼女は屈託なく微笑む。
『私が先生を愛する事が出来て 先生も私を愛してくださって…… だから幸せです』
 ったく 情けねえ――――
 難なく言われた言葉に 我慢出来ていないのは大人の自分の方だと思い知らされた。

 
 上着を脱いで身軽になった土方は ちづるの手を引いてソファに腰を下ろし
 ふたりきりで逢えなかった分を補うように また彼女を腕の中に取り込んだ。
「すまなかったな…… いつも間に合わなくて」
「全然大丈夫でしたよ このお部屋にいると先生を感じる事が出来たから」 
 でもそれは"平気"とは違うだろ? そう問い掛けようとして止めた。
 彼女が精一杯強がってくれているのを無下にしたくなかった。 
「詫びと言っちゃなんだが 何か欲しい物とかねえか? 買っとくから」
「お詫びだなんて…… 私が此処に来たくてお邪魔させて頂いてるんです 
 それに欲しい物なんて無いですし…… 」
 予想した通りの答えに やっぱりなと心で零す。
「でも…… してみたい事はあります」
「おお 何でも言ってみろ 俺が手伝える事か?」
「土方先生の…… 」 
「あ? 俺の?」
「土方先生の煙草を吸ってみたいです」
「……………… 何だって?」
 ちづるの声はしっかり聞こえのだが 此処はやはり聞き返すレベルだった。
「土方先生の煙草を…… 」 
 聞き違いでは無いと分かって 土方は膝の上にいるちづるの顔をまじまじと見た。
「お前な 未成年に喫煙って…… 況してや教師の俺がさせる訳ねえだろ?」
「でも 先生何でも言ってみろって…… 」
「そら確かに言ったけどよ…… 」
 珍しく不貞腐れた表情をする彼女の真意が読み取れず 土方は混乱してくる。
「それに"教師が未成年に"って言うなら 先生と私がお付き合いしてる事自体…… 」
「ま まあな そこ突っ込まれたら何も言えねえわな」
 在学中の教え子との恋愛。最も非難されるその罪を自分が犯している自覚はある。
「1本全部って訳じゃないんです ほんのちょっとだけ」
「選りに選ってなんで煙草なんだ?」
 普段のちづるからは想像も出来ず その訳も皆目見当がつかなかったが
 ある意味余程の理由があるのだろうと土方は思った。 
「此処に来ると先生の匂いがしてて…… 先生の家だから当たり前なんですけど
 その時ふと思ったんです 土方先生の煙草は うちのお父さんのとは違うなって」
 話す相手もいない部屋で 陽が沈み始め段々薄暗くなる時刻。
 ひとり待つだけの中 ちづるが土方を感じられたのはこの部屋に漂う匂いだった。
 同時に抱きしめられた時 頬を当てたワイシャツの感触も思い出して切なくなった。  
「土方先生の煙草ってどんなのかなあ?って ただの好奇心です」
 好奇心? いまいちピンと来ない土方は さっき車で聴いた声を思い出した。
「お前…… 今日が何の日か知ってるか?」 
「今日ですか? ん~ 私祝日以外はあまり詳しくなくて 何の日なんですか?」
 どうやらあの"記念日"を知ってて言い出したのでは無さそうで土方はホッとした。
「いや 大したこっちゃねえよ
 あ~ それより煙草だが 吸った事のねえお前にはただ苦くて苦しいだけだぞ?」
「はい そうだと思います」
 妙な所で頑固な性格を見せるちづる。土方は短い溜め息を吐いた。
「分かった ちょっと待ってろ」
 彼はちづるを膝から下ろして立ち上がると ソファの背凭れに放っておいた
 さっきまで羽織っていた上着を手にして 内ポケットから小箱を取り出し
 オーディオラックの上にあった灰皿を一緒に持って戻って来た。

 床に敷かれたカーペットにどかりと腰を下ろし ソファのちづるに視線を向けると
 彼女は合図を受けたように 緊張した面持ちで土方の隣に座った。
 土方は今度は長めの溜め息を吐き出して 小箱から1本跳ねさせそれを口に咥えた。
「え 先生…… マッチで火を点けるんですか?」 
 土方の手に最近あまり目にしなくなった物を見つけて 珍しそうに覗き込む。
「ああ 外では面倒でライターだけどな マッチの火の方がうめえから」
 葉を燃やす火に因って味が変わるのかと 目を丸くして驚くちづるの前で
 土方はマッチ棒を箱の側薬に擦り付けて着火させ 煙草の先端に火を移した。
 ひと息吸い込み ちづるの顔へ向けてふぅーっと煙を吹きつける。
「っ!? ごほっごほっ あぁっ ごほほっ…… 」 
 てっきり土方が見本を見せてくれていると思っていたちづるは いきなりの白煙に
 目に染みて涙が出るし 咽は締めつけられて呼吸が苦しくなるしで 
 暫く身体を丸めて咳込んだ後 恨めしそうに土方を見上げた。 
「な? 苦しかったろ?」
 思った通りのちづるの反応に 彼はにやにやと微笑を浮かべながら
 これで諦めるだろうと 次の煙を吸い込んだ時だった。
 まだ涙目状態のちづるが 四つ這いでじりじりと土方に迫ってきた。その瞬間
 煙草を持っている手を口元から退けられ 代わりに あ?っと思う間もなく
 唇を押し付けてきた彼女の勢いに 仰向けで床に倒れ込んだ土方は
 背中を打ちつけた所為で 口の中に残っていた煙をちづるの口に吐き出した。
 だが今度は咽る事も無かったちづるは 土方に伸し掛かったままキスを続ける。
「ち づ? んっ おぃ煙草の灰…… ふっ ん…… 」 
 ちづるのキスは いつからこんな事が出来るようになった?と戸惑う程だった。  
 柔らかい唇で土方をしっかり捕らえて 恥ずかしさを忘れたかのように
 粘着質な音を響かせて 熱い吐息と舌を絡めていた。
「はぁぁ…… 煙草をくれなかった仕返しです」
「ま 参ったから…… ちょっ んんっ これ以上カンベン…… 」
 男の それも大人の場合 時に若い男子学生よりもブレーキが効かない事がある。
 その相手が心底惚れこんだ女なら尚更だ。このままだと帰したく無くなってくる。
「でも…… 歳三さんが大好きです」 
 今か!? 今っ この状況で名前を言うのか!?
 ふたりきりの時は名前で呼べと頼んでも絶対言わねえ癖にっ。
「た たまには私からでも…… いいでしょ?」  
 熱を帯びた目で縋るように見下ろしてくるのは 無意識なのか作戦なのか。
「おぉ…… そうだな たまには 悪くねえ な…… 」
 立派な大人の土方は今だけ"大人"を諦めて 愛おしい恋人を抱きしめた。
 




― END ―




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