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みぃ

Author:みぃ
ブログ公開:2012/4/17

この作品に出会えて
本当に良かった。
これからもずっと変わらず
愛してます。(主に副長を♡)

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キスの日


【藤堂 平助/SSL】




 水族館なんて久し振りだ。
 小学校の遠足以来だから 7, 8年くらい前か。
 今日は創立記念日で学園は休み。平日だから客で混雑している様子も無い。
「平助くんっ 早くっ」
 少し先で振り向いて急かす彼女は オレの名前を呼びながら 
 当時を思い出すような まだ幼さの残る笑顔を浮かべ手を振る。   
「慌てっと転んじま…… 危ねっ」
 言ってる傍から身体のバランスを崩した彼女が
「わっ とととっ」反った背中を元に戻そうと腕を伸ばす。
 その手をどうにか引っ張って事なきを得る。
「大丈夫か!? ちづるっ」
「う うんっ ありがと平助く…… 」 
 あれ? なんかちづるの顔が近い……
 目の前に居るのは紛れも無くオレのかわいい彼女なんだけど?
 なんだ!?このやわらかいの。めっちゃ気持ちいい。
 痩せっぽっちの外見に 今まで色っぽいとか感じた事無かったけど
 これは意外に……  と言うかオレ何してんだ?
「………… っうわ!? ごっ ごめんっ」
 急いでちづるから両腕を解く。
 ひっくり返って倒れそうな彼女の手を引いた勢いで腕の中に取り込んでた。
 他意は無い。絶対無いのに あんまり気持ちよくて腕に力が入っちまった! 
「平助くんが謝る事無いよ 助けてくれたのに…… 」
 そう言ってちづるは何故か泣きそうな顔をする。
 もしかしてオレに抱きしめられたのがそんなに嫌だったとか?
「あのさ ちづる…… 」
「……行こ」
 聞こえなかったのか 聞こえない振りをしたのか。
 ちづるは問い掛けようとしたオレをそのままに歩き出した。


 高速バスを使ってまで こんなに遠出したデートは初めてだ。
 きっかけはオレの家で見てたテレビ番組中に現れた"シャチ"。
 画面には手で指示するトレーナーの前で水中から上がり
 艶々とした身体でしなやかにポーズを決める"海のギャング"。
 なんかそれをすげえキラキラした目で見詰めてるから 
 この水族館まで連れて行って 直に見せてやりたくなった。
 かなり時間掛かるけど…… と 後から付け足したオレの言葉は
 その耳にはもう入っていなさそうなくらい彼女は喜んだ。
 2時間を越える乗りっ放しにケツがちょっと痛えなって思ったけど
 ちづるとの会話が楽しくて全然飽きる事も無く目的地に到着。
 天気は良好!
 今日はサイコーにいい一日にしてみせる!って思った。

 
 なのに…… さっきのちづるの様子に気持ちが萎む。
 ちづるはそんなにオレの事好きじゃないのかもしれない。
 告ったのはオレの方からだった。返事にその場でちづるが頷くのを見て
 彼女もオレを幼馴染とだけじゃないって想いでいてくれてたのかな?って。
 でも自惚れってヤツだったのかも…… 。
 付き合い初めの頃 学校帰りに手え繋ぎたいって言ったら
『まだ恥ずかしい…… 』 ってホントに顔真っ赤になるから無理に出来なかった。
 チビの頃は自然な事だったのに。
 だからキスなんて夢のまた夢だなってちょっと(かなり)残念に思ったけど
 それでも彼氏として一緒にいられるだけで良かったからオレは満足してた。
 あれから数カ月経ったけど ちづるは…… どう思ってンのかな……
 ああーーーーっ しっかりしろ!オレっ。
 自分の頬に両手でパン!と一発喝を入れて 彼女を追いかけた。  
  
 何はともあれ まず"シャチ"だ。
 ショーまでまだ時間があったけど 帰りのバスも来た時と同じ時間が掛かるのだ。
 そんなにゆっくりとしていられない。
 それにしても広い水族館だ。遠足で行った所とは規模が違うっ。
 途中 図鑑でしか見た事の無い深海の珍しい生き物や
 鮮やかな色した小魚を横目に通り過ぎ ショップに並ぶぬいぐるみの前で
 立ち止まるちづるを説得して メインゲートから一番遠い場所を目指すと
「わぁぁ」 と彼女は歓喜の声を上げた。そこには空の下 真っ青な海があって
 目の前にはテレビで見たのと同じ 黒と白の配色をした巨大な生き物が
 一体どうやって作ったんだ?と思う程のでっかい水槽の中に居ながら
 その雄大とした身体の所為で 少し窮屈そうに泳いでいるように感じた。
「平助くん! シャチがいるよ! ほらっテレビと同じ ううん!すっごい大きい!!」
 なんだよその笑顔。それ見れただけで今日のミッション大成功じゃんっ。
 水槽から数列の観覧席だと シャチが起こした水飛沫を浴びる事が出来るんだけど
 映像で見たそン時の様子がハンパなかったから まだ暑くも無いこの陽気で
 ちづるに風邪でも引かせたら大変だと思って 後列の席を選んで腰を下ろした。
 移動に時間が掛かったから ショーは観覧席に着いて間もなく始まった。
 トレーナーに口の中へ餌を投げて貰った二頭のシャチが 身体を横向きにして
 白い腹を見せながら観客の方に近寄ってまずバシャン!!瞬時悲鳴が上がる。
 尾びれの力がすげえっ。 まるっきり仰向けになって泳いだり
 水面で身を立たせくるくる回ったり 観客席に向かって口から海水を噴き掛ける。
 お立ち台?で胸張ってポージングした姿はカッコ良過ぎてジーンとした。
「あれやるかな? 平助くんっ」
 ワクワクし過ぎだろっと突っ込みたいのを我慢して 「やるといいな」 と返事した。
 ちづるが期待しているのはトレーナーとの共演で シャチの口先にトレーナーが乗り
 ロケットのように水面からジャンプして現れると言う凄技。次の瞬間
 餌をやったトレーナーが水中へと飛び込んだ。 「あっ」 「おっ」 と同時にふたりで
 声を出したその時 水面から一頭とひとりが最高のコンビネーションで飛び出したっ。 
 青空に最大の歓声と拍手が響く。やばい。オレ感動しちまって目が熱くなって来た。
「平助くん 泣いてるの?」
「なっ!? っンな訳ねえじゃんっ」
 強がりを言ってちづるを見たらマジ泣きしてて驚いた。
「私はだめ…… こんなに一生懸命に芸をして健気過ぎて…… 」
「だよな! 実はオレも打ちのめされたっ」
「ふふふ 同じだね私達」
 ふんわり笑うちづるがかわいくて ずっと見ていたかった。


 ショーが行われた場所の下の階では 水中でのシャチを観る事が出来た。
 ひと仕事を終えた役者達が自由に泳いでいるのを ちづると並んで眺める。
「楽しかったぁ 連れて来てくれてありがと平助くん」 
「あ~でもバス代とかオレが出した訳じゃねえし 却ってちづるに無理させたな」
「自分の分出すの当たり前だよ 平助くんがバスの乗り場とか時間を調べてくれて
 何より行こうって誘ってくれたから こうして来る事が出来たんだもんっ
 それにしても実物ってやっぱり迫力が違ったね シャチが起こした水飛沫って
 観覧席の10列目くらいまで届いてた気がする」
「あいつらこっちの反応に面白がってるように見えなかったか?」
「え~? でも結構しつこいなって思ったかも バシャバシャって ふふふ」
「だろ~?って こんな事言ったら必死に教えたトレーナーに怒られちまうな」
「うん だってよく考えたら命掛けだものね」
 普段と変わらないちづるの様子に 正直オレはホッとした。そうしながらも
 何か隠しているようにも感じて 僅かな不安は拭いきれずにいた。その時
 一頭のシャチがオレ達に近づいて来たかと思うと ちづるの顔に口先を当てたから
 慌てたオレは水槽から彼女を剥がして 自分の方に引っ張り寄せた。
「コラ! オレだってまだちづるとキスしてねえんだからな!!」
「え?」
 おい待て。オレ今なんつった? キ キスとか…… バカか? バカだろオレ!!
「あああっ ごめんっ また触っちまってるし」
 直ぐ放そうとした手を やわらかいものが掴んだ。
「どっ どうしていつも放しちゃうの!?」
「え だって…… 」
「私達付き合ってるんだよねっ?なのに平助くんは"彼氏"になっても全然変わらない」
「変わらないって…… ?」
「いっつも私の世話を焼いたり 困った事があると助けてくれたり…… 」
「それだってフツーに彼氏の役目だろ?」
「でも私に触るの嫌みたいだし」
「え?」
「キ キスだって…… してくれないし」
「………… ………… ………… ………… え?」

 えーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?

 オレは叫びたいのを微かな理性で抑えた。
 ちづるはオレに触られるのを嫌がってたんじゃないのか?
「平助くんの事ずっと好きだったけど その気持ちを伝えたら……
 私を幼馴染としか思って無い平助くんと気まずくなりそうで怖かった」
「い いつから?」 
 夢を見てるような気分で ちづるに問い掛けた。
「いつからなんて忘れちゃった 気が付いたらもう好きになってたの」
 なんて勿体ねえ。
 オレと同じ悩みをちづるも持っていたなんて。
 彼氏と彼女の関係になりたい。でもその所為で大切な幼馴染の関係まで
 壊れるかもしれないと思ったら 中々言い出せる想いじゃなかった。
 でもどんどん膨らむ気持ちは抑えきれなくて到頭伝えてしまった。
「だから平助くんが好きだって言ってくれて信じられないくらい嬉しくて でも……
 幼馴染の時と平助くんの態度が変わらないから 私に魅力が無いんだろうなって」
 ちづるは綺麗になった。
 傍に居過ぎて分からなかったけど 腹出しながら一緒に昼寝してたのは
 もうずっと昔の事なんだな。いつの間にか女として意識するようになって
 でもそれがなんだかちづるに悪いような気がして ひとり悶々としてた時期があって
 だけどやっぱり誰にもとられたくなくて あの日。
 嬉しかった。ただ嬉しかった。これからもっと大事にしたいと思った。
 けどその想いが 彼氏としてちづるに踏み込んで行けない原因になってたんだ。
 幼馴染から抜け出せなかったのはオレの方だ。
「オレ…… ずっと思ってたよ ちづるを抱きしめたいって」
「えっ」
「抱きしめて キスして それ以上の事だってしたいって思ってる」
 ちづるは困ったような顔になったけど ある意味ちづるらしいと思った。
 だからなんか安心したんだ。
「ごめんな不安にさせて ちづるに魅力が無いからじゃねえよ
 寧ろビシビシ感じて 襲いたいの我慢してるくらいなんだぜ?」
「襲っ え…… その…… う 嬉しいけど…… 」
「ははっ さすがに此処じゃしねえって…… ん~ でもこれくらいならいっか」
 柔らかい筈の でもまだその感触を知らない唇で彼女の頬にキスした。
 人が驚くのは見慣れてるけど 驚き過ぎて固まるのは初めて見た。
「ち ちづる?」 
 ボン!と聞こえたような勢いで ちづるの顔が立ち所に茹でダコ状態になる。
「ごめん 一応ホントにしたい場所は避けたんだけど」 
 ちづるはぶんぶんと頭を振りながらも 一気に泣きベソ顔に変わった。
「少しずつ進んで行こう オレ達のスピードで」 
 嫌だった訳じゃないと感じたのは オレの言葉に大きく頷いてくれたから。
 少し落ち着いたちづるは それでも火照った頬を両手で隠しながら話し始める。
「でも平助くんと私…… もうキス…… してるんだよ」
「は? ………… え!? そんな覚えねえぞ!?」
「私も無い」
「へ?」
「前に平助くんのお母さんと話していた時に言われたの…… 」

『3歳頃だったかしら あなた達を遊ばせていたら"ちゅっちゅ"し始めたから
 急いでカメラ取りに行ったわ そりゃ可愛かったのよお でねっ
「ちづるちゃん平助のお嫁さんになってくれる?」 って聞いたら 「うん!」 て
 言ってくれて 平助も 「ぼくもちづるのおよめさんになる」 って言うから笑っちゃった
 あ! その時の写真見せてあげるわねっ そうそうビデオもあるのよお~』

「で…… ホントに してたのか?」
「う うん…… 」
「口と口で?」
 返事をするのも耐えられないと言う風に ちづるは再び真っ赤になってこくんと頷いた。
「かーちゃん オレにはひと言も…… 」
「 『あの子に見せたら調子に乗って勿体無いから』 って言ってた」
「(さすが母親 自分の息子をよく分かってンな…… ) あ じゃ心配する事なかったんだ」
「え?」
「ちづる オレの"嫁さん"になってくれンだろ?」
「えぇっ!?」
「だって うんって言ったって 違うの?」
「それは平助くんママがっ もおっ いじわる!
 お弁当の中身 平助くんの好きな物ばっかりで作って来たのにあげないっ」
 参った。
 怒った顔も犯罪級にかわいいワ。やっぱ誰にもやれねえ。
 ちづるはオレだけのもの。
 いつか胸張ってそう言えるような大人になってお前を迎えに行くから
 その時は怒らねえで頷いてくれよ。

 な? ちづる。





― END ―



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